ストマ装具の交換が介護士にもできるようになったことご存知ですか?
ストマの利用者と接したことがあっても、実際にストマ装具の交換となると不安ですよね。
この記事では、介護士でもできるようになった背景とストマ装具の交換方法についてわかりやすくお伝えします。
この記事を読むことにより、ストマの装具交換に疑問や不安を感じているあなたの悩みが解消され、自信を持って仕事に取り組むことができるでしょう!
ストマとは
ストマとは、手術により人工的に作られた排泄口(排尿・排便)のことです。
よく「人工肛門」や「人工膀胱」などと言われます。
大腸癌、小腸癌などの消化器系疾患や膀胱癌、前立腺癌などの泌尿器系疾患により正常に働かなくなった排泄機能を補う役割があります。
ストマは、小腸や大腸の一部を体外に出す構造となっています。
腸の一部が体外に露出している状態なので、一見痛そうに見えますが、感覚神経が通っていない部分なので、痛みは感じないのです。
ストマを造設すると便や尿を溜める臓器を使わないため、排泄のタイミングを自分でコントロールすることができません。
そのため、ストマ装具(排泄物を貯める袋)を装着して、排泄物を溜めます。
溜まった排泄物は、ストマ装具の末端部分から排出できる造りとなっており、清潔を保つため、定期的にストマ装具内の排泄物の破棄したり、2〜4日に1回、装具自体の交換が必要となります。
ストマ装具の交換は医行為だった!?
今は介護士によるストマ装具の交換は認められていますが、平成23年まで認められていませんでした。
平成17年7月「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」において、肌に密着したストマ装具の交換が「医行為」に該当するとの記載があります。
医行為とは医師の専門的な判断や技術を持って行わなければ、人の体を傷つけてしまう恐れある行為のことです。
ストマ装具は、ストマ周囲の肌に粘着(密着)させ固定させるため、無理に剥がしたりすると赤みやただれなどの皮膚トラブルを起こす危険性があります。
その為、介護士にはストマパウチ(排泄物を溜める袋)内の排泄物の破棄のみ許可されていました。
過去にこのようなことがあったので、介護士の中には「介護士はストマ装具の交換はできない」と思っている人がいるのです。
医行為についてはこちら。
介護士によるストマ装具の交換が認められた背景
平成23年に介護士によるストマ装具の交換が認められました。
その背景には現場での介護士によるストマ装具の交換が余儀なくされていたという事情があったのです。
平成18年11月、日本オストミー協会の「介護福祉士によるストーマ装具の交換に関する調査報告書」によると、
「介護福祉士がストマ装具の交換を行ったことがある割合は50%を超えている」との集計結果でした。
ストマ装具が医行為と認定されているにもかかわらず、介護福祉士がストマ装具の交換を行うには理由がありました。
それは、ストマを造設した人は、排泄のタイミングをコントロールできないため、いつ排泄がおこり、ストマ装具から排泄物が漏れてしまうか予想ができなかったことです。
排泄物が漏れてしまった場合、早く交換しなければ、匂いや不快感などの衛生上の問題や皮膚トラブルを起こす可能性が高く、すぐに交換することが必要だったのです。
また、介護福祉士がストマ装具の交換を行ったことにより、利用者に事故が起きたりケガをさせてしまったりしたことは、99.4%が「ない」と回答していて事故の危険性が低いことがわかりました。
これらの理由から日本オストミー協会は、厚生労働省あてに介護士によるストマ交換を認めてもらように意見しました。
これに対して、平成23年7月、厚生労働省は条件付きで介護士によるストマ装具の交換を認めています。
肌への接着面に皮膚保護機能を有するストーマ装具については、ストーマ及びその周辺の状態が安定している場合等、専門的な管理が必要とされない場合には、その剥離による障害等のおそれは極めて低いことから、当該ストーマ装具の交換は原則として医行為には該当しない。
介護士によるストマ装具の交換ができる条件
介護士によるストマ装具の交換ができる条件とは、下記の2点です。
- ストマ装具に皮膚保護機能が有していること
- ストマ、及びその周辺の皮膚に異常がないこと
それぞれの条件について詳しく説明していきます。
皮膚保護機能付きストマ装具とは
ストマ装具は、排泄物をためる「ストマ袋(パウチ)」と肌に直接触れる台座となる「面板」で構成されていて、面板の皮膚に直接触れる側に「皮膚保護剤」がついてます。
保護機能付きストマとは、面板に皮膚保護剤がついているストマ装具のことです。
皮膚保護剤には下記の4つの作用があります。
- 面板と皮膚を密着させる作用
- 排泄物の水分吸収作用
- 刺激から皮膚を守る作用
- 菌の繁殖を抑える作用
皮膚保護剤には、面板に初めからついているもの以外にも粉状や練状のもの、板状のタイプもあります。
粉状のものは、ストマやその周辺皮膚がただれたときに患部に直接つけることで排泄物の刺激から保護する効果があります。
排泄物には消化酵素が多く含まれていて、それが刺激となり、皮膚トラブルの原因になるのです。
練状や板状のものは、皮膚のシワなどによってできる面板と皮膚との隙間を埋め、排泄物の漏れを防ぐ効果があります。
練状のものは、適量を隙間ができる皮膚のシワを平らに埋めるように塗り、その上から面板を貼り、
板状のものは、広範囲のシワの溝を埋める時に使用し、その上から面板を貼り隙間を作らないようにします。
ストマ、及びその周辺の皮膚に異常とは
ストマやその周辺の異常については、下記のようなことがあります。
- ストマからの出血
- 脱出(ストマが体外へ大きくはみ出してしまう)
- ストマや周囲皮膚の炎症(ただれ、発疹など)
これらの症状が見られる場合は、医行為に該当してしまうため、施設の嘱託医や看護師に相談する必要があります。
ストマ装具の交換方法
ストマ装具の交換方法についてお伝えしていきます。
わかりやすように動画を参考にお伝えしていきます。
①必要物品の用意
マスク、手袋、ガウン、消毒液、ガーゼ、ビニール袋、石鹸、ぬるま湯、洗面器、ハサミ、
剥離剤、交換用ストマ装具(パウチ)の必要物品を事前に用意しておきます。
②感染予防対策
感染予防のため、手指消毒を行い、マスク、手袋、ガウンを装着します。
③パウチを剥がす
排泄物が漏れて衣類や寝具が汚れないようにストマの下にガーゼを準備し、ストマパウチを剥がしていきます。
剥がす時は、皮膚に負担がかからないようにストマ周辺の皮膚を指で押さえながら剥がしていきます。
剥がれにくい時は剥離剤を使用すると良いでしょう。
剥離剤とは、ストマ装具の面板部分を皮膚から剥がす際に、肌への負担を減らすために使用するものです。
④ストマ、及びストマ周辺の皮膚状態の確認
ストマ、及びストマ周辺の皮膚にただれや発疹がないか確認します。
異常がある場合は、すぐ施設の嘱託医や看護師へ報告し、指示を仰ぎます。
⑤洗浄
石鹸をガーゼにつけ、ストマとその周辺の皮膚を洗浄します。
洗浄後、シャワーボトルを使用してぬるま湯で洗い流しましょう。
びらん(ストマ周辺の皮膚の表面が剥がれて、赤くなってただれている状態)がある場合は、粉状皮膚保護剤を使用します。
⑥パウチの貼り付け
皮膚保護剤の中心の剥離紙を剥がし、貼付します。
その際、ストマ装具と皮膚の間に隙間ができないように貼ることが重要です。
貼り付ける部分の皮膚にシワが寄らないように利用者にお腹を張って(お腹に力を入れて)もらうようにします。
外側の剥離紙を剥がし、数秒間貼付面を押さえて肌に馴染ませます。
利用者に違和感や異常がないか確認して、問題がなければ終了となります。
ストマトラブルの予防と対応
ストマ装具の交換をする際、ストマや周辺皮膚を傷つけてしまったり、スキントラブルがあったらどう対応すれば良いわからないと不安ですよね。
逆にトラブルの原因や対応がわかっていれば、その不安が軽くなると思います。
症状別に原因と対応方法についてお伝えします。
ストマからの出血
ストマから出血することがあります。ストマ部分はデリケートな部分であり、血管も多く密集しています。
そのため、出血しやすいので注意が必要です。
原因
出血の原因は、ストマが装具と接触し、摩擦や圧迫などによってストマの粘膜が傷つき出血することが挙げられます。
対応方法
まず、出血部位や出血量、ストマの損傷の有無など状況の確認をします。
少しの出血なら、ガーゼで圧迫することで止血することができるでしょう。
出血が止まらなかったら、処置が必要になるため、すぐ医師や看護師へ報告しましょう。
予防方法
出血の原因が摩擦や圧迫による外的刺激が原因の多くである為、ストマ装具の貼り付け位置やストマ装具自体が適切か見直し、できるだけ外的刺激が加わらないようにしましょう。
脱出
ストマ部分が普段より、大きく体外へはみ出してしまうことがあります。
症状が酷いと、ストマ装具が適切に装着できず、ストマを傷つけてしまう恐れがあります。
原因
ストマ手術の際、ストマ孔(ストマ造設のためにお腹に開ける穴)が大きすぎることが原因にあります。
そのことにより、お腹に力が入った時にストマ部分が外に大きく出てしまうことがあります。
対応方法
ベッドなどで仰向けに寝てもらうことで、もとに戻ることがあります。
ストマがもとに戻り、痛みや排泄が問題なくされていれば、そのまま様子をみて大丈夫でしょう。
しかし、そうでない場合は、医師の診察が必要になります。
予防方法
脱出を予防する方法として、ヘルニアベルトを使用することで、脱出をある程度予防することができます。
人は座った姿勢や前にかがむ姿勢を取るとお腹が圧迫(腹圧)され、ストマが外に出てしまうことがあります。
ヘルニアベルトを使用することで、座った時や前屈みになった時に腹圧がかかりにくくなり、脱出を予防する効果があります。
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それでも脱出を繰り返す場合は、ストマを再度作り直す手術が必要になる場合もあります。
ストマや周辺皮膚の炎症(ただれ、発疹)
ストマやストマ周辺の皮膚がが赤くただれてしまったり、発疹ができたりすることがあります。
それにより、痒みや痛みが伴う場合もあります。
原因
主な原因は、排泄物が皮膚に付着して、その刺激により炎症が起こることです。
その他の原因としては、ストマ装具の交換の際に傷つけてしまったり、使用している皮膚保護剤が皮膚にあっていなかったりする場合もあります。
また、不潔な状態が続くと真菌やカンジタ菌などの細菌により炎症が起こることもあります。
対応方法
トラブルが起きている部位の状態を確認します。
状態によっては、軟膏を塗布したり、使用している皮膚保護剤の変更をしたりする必要がある為、まずは医師や看護師に相談をするようにしましょう。
予防方法
ストマやストマ周辺の皮膚をしっかり洗浄し清潔に保つことが大切です。
場合によっては、ストマ装具の交換頻度を増やすことも必要です。
ストマ装具と皮膚の間に隙間ができてしまうと、その隙間に排泄物が入ってしまい、皮膚トラブルが起きる原因になります。
利用者に合うストマ装具や皮膚保護剤を使用したりすることで、排泄物の潜り込みを防ぐことができます。
医師や看護師と連携を図りながら、スキントラブルの予防に努めましょう。
まとめ
介護士がストマ装具の交換をするための条件としては、下記の2つです。
- ストマ装具に皮膚保護機能が有していること
- ストマ、及びその周辺の皮膚に異常がないこと
ストマ装具の交換方法やスキントラブルの原因や対応策についてもお伝えしました。
もしストマやその周辺皮膚に異常を見つけた時は、処置が必要になる場合もある為、すぐに医師や看護師に報告して指示を仰ぐようにしましょう。
この記事により、ストマ装具の交換に関する疑問や不安が解消され、自信を持って仕事に取り組むことができるようになれば幸いです。
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