処遇改善手当、特定処遇改善手当については、
「介護職員の給与が月8万円上がる」と話題になったりと、一度は耳にしたことがあると思います。
しかし、制度の内容は複雑で理解しにくいし、いったい自分は手当を貰えているのか分かりずらい部分もあります。
この記事では処遇改善手当、特定処遇改善手当の制度概要を説明するとともに、
制度に関するよくある質問にお答えしていきます。
処遇改善手当、処遇改善加算とは
まず言葉の意味を確認したいと思います。
処遇改善加算:事業所が条件を満たすことで国から貰えるお金のことです。
処遇改善手当:国から貰った処遇改善加算を元に事業所から介護職員に対して払われる手当のことです。
処遇改善手当は誰が貰えるの?
事業所が処遇改善加算の条件を満たしていれば、そこで働く介護職員に対して処遇改善手当の給付がされます。
「介護職員」であれば受け取れる可能性があるので、パートや派遣の介護職員も貰える可能性があります。
相談員やケアマネージャーは対象外です(介護士と兼務していれば別)。
ただし、「誰に」「いくら」支給するかは事業所が自由に決めることができます。
なので、事業所が処遇改善加算をもらっていて、自分が介護職だったとしても、
貰えない場合もあります。
いくら貰えるの?
まず、事業所が受け取る処遇改善加算の金額については処遇改善加算の1~3まである区分によって変わってきます。
そして、介護職員が受け取る処遇改善手当について、どのように支給するかは事業所が決めていいことになっています。
一般的には以下のパターンがあるようです。
- 一時金としてまとめて払う
- 定期昇給分にあてる
- 毎月一定額を支給する
毎月給与と一緒に払われているのであれば、毎月の給与明細に金額が書かれているはずです。
一時金として支給される、または定期昇給分にあてられる場合には、
事業所の就業規則や給与規定にその旨の記載があるはずなので確認してみましょう。
お金に関することですし、ちょっと上司には聞きづらいというときは、職場の先輩などに確認してみてはいかがでしょうか。
処遇改善手当が貰えない場合
以下のように処遇改善手当が貰えないこともあります。
事業所が申請をしていない
事業所が処遇改善加算の申請をしていない場合もあります。
この場合は処遇改善手当をもらうことができません。
事業所が処遇改善加算の申請をしない理由として、令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、
事務作業が煩雑であることや利用者負担が発生してしまうことがあるようです。
手当を配分する対象外になってしまうこともある
事業所が処遇改善交付金を受け取っていても、そのお金をどのように配分するかは事業所の裁量に任せられています。
なので、あなたが貰えない場合もあり得ます。
ただし、事業所にはすべての職員に対して分配方法について説明する義務があるので、
貰えていない場合でも説明を求める権利はあります。
あなたの事業所がどのような配分をしているかは、上司や人事の人に確認してみましょう。
処遇改善手当をどのように支給するか、事業所の就業規則や給与規定に書いてあることもあるのでこちらも要チェックです。
処遇改善加算取得の要件
ここでは、事業所が国から処遇改善加算を受け取るための要件についてみていきましょう。
大きく分けると下の2つがあります。
キャリアパス要件
キャリアパス要件には以下の3種類があります。
- 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること
- 資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること
- 経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を
判定する仕組みを設けること
職場環境等要件
職場環境等要件とは、賃金改善以外の処遇改善(職場環境の改善など)の取組を実施することです。
これらをどれだけ満たすことができているかで、次の項目で説明する処遇改善加算の「区分」が変わってきます。
処遇改善加算の区分
キャリアパス要件、職場環境等要件をどれだけ満たすことができているかで、
処遇改善加算の区分が変わってきます。
処遇改善加算1が一番要件が厳しく、貰える金額も大きいです。
2、3と数字が大きくなるにつれて、要件は緩く、金額は小さくなっていきます。
区分4と5については、すでに廃止されています。
処遇改善加算1
キャリアパス要件①、②、③全てと職場環境等要件を満たす場合に、
介護職員1人あたり月額3万7000円相当の加算が受け取れます。
処遇改善加算2
キャリアパス要件①、②と職場環境等要件を満たす場合に、
介護職員1人あたり月額2万7000円相当の加算が受け取れます。
処遇改善加算3
キャリアパス要件①または②と職場環境等要件を満たす場合に、
介護職員1人あたり月額1万5000円相当の加算が受け取れます。
処遇改善加算4、処遇改善加算5
2021年3月31日に廃止されています。
特定処遇改善加算とは
特定処遇改善加算とは経験、技能のある介護職員(勤続10年以上の職員を目安とする)の給与アップを目的として、
2019年10月1日に始まりました。
誰が貰えるの?
2021年度の介護報酬の改定の際に、特定処遇改善加算の配分についてのルール変更がありました。
ここでは、新しい配分ルールについての説明をしていきます。
配分ルール
まず、職員を以下の3グループに分けます。
A:経験、技能のある介護職員
B:他の介護職員
C:その他の職種
そして、平均賃上げ額は
Aの職員はBよりも多く、
Cの職員はBの半分以下にするというルールになっています。
そして、A:経験、技能のある介護職員のうち、一人は月額8万円の給与アップ、
もしくは年収が440万円を超えるようにするというルールがあります。
制度ができ始めのころ、
上記の「一人は月額8万円の給与アップ」という文言が「介護職員全員8万円アップ」というふうに拡大解釈されて広まってしまいました。
実際は全員が8万円アップするわけではないことが後で分かり、がっかりした人もいると思います。
上記2つのルールさえ守っていれば、誰に、いくら支給するかは事業所が自由に決められます。
なので、自分はそもそも特定処遇改善手当を貰えているのか、いくら貰えるのか知りたいときは、
就業規則や給与規定を確認したり、上司や人事の人に聞いてみましょう。
特定処遇改善加算取得の要件
特定処遇改善加算の要件は以下の3つです。
- 処遇改善加算①~③のいずれかを取得している
- 処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組を行っていること
- 介護職員処遇改善加算に基づく取組みについて、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること
特定処遇改善加算の区分
特定処遇改善加算の区分は以下の2つです。
加算I
特定加算Ⅰは、サービス提供体制等強化加算の最も上位の区分を算定している場合に算定できます。
※「サービス提供体制等強化加算」とは以下の要件を満たすと算定できます。
- 職員の研修を計画的に実施
- 介護福祉士が一定以上の割合で配置されている
- 定期的な会議の開催
- 定期的な健康診断の実施
加算II
加算Iに該当しない場合、加算IIとなります。
以下のように事業所によって加算Iと加算IIの加算率が決まっています。
出典:厚生労働省2019年度介護報酬改定について
~介護職員の更なる処遇改善~
事業所が貰っている毎月の介護報酬×加算率の金額が特定処遇改善加算で貰える金額になります。
そして、そのお金を配分ルールに基づいて職員に配分する流れです。
処遇改善手当について、よくある質問
ここでは処遇改善手当について、よくある質問についてみていきたいと思います。
ネット上にあった処遇改善手当についての質問とその返答を見ながら、
処遇改善手当についての理解を深めて頂ければと思います。
介護職なのにもらえないのは何故?
ネット上を見ても「介護職なのに手当を貰えない」と思っている人が多く居るようです。
以下の質問者の人は「自分の家族は介護士なのに処遇改善加算が貰えてない」ことが疑問のようです。
処遇改善加算について教えてください。私と家族は別の特養で働いています。
2人とも10年以上勤務しています。 私は先月の給与から毎月4000円(介護福祉士ではないので)処遇改善手当として頂いています。
家族はまだ頂いていないのですが、詳しい話もないらしいのです。このまま支給されないのかなーと嘆いています。
私のように毎月の給与にプラスされる以外にはどんな方法で支給されるのでしょうか。 また、支給されない方も多いのでしょうか。
上記質問に対する返答もわかりやすかったので、紹介したいと思います。
当然ですが処遇改善加算は事業所が取得していなければそれに伴う支給はありません。
支給方法は毎月の給与のほか、賞与などの一時金としても可能です。
また、支給対象などは事業所が自由に設定していいこととなっているため、
事業所が定める支給対象になっていないなら支給されません。
ただし、加算を取得している場合、加算で入った報酬をどのように支給するか、
どういう対象に支給するかは、例え支給対象でない職員に対しても周知することが義務付けられています。
というわけで、その事業所の管理者や給与担当者に聞く以外に支給されるかどうかを知る方法はないです。
処遇改善手当の支給対象は事業所が自由に決めていいので、なかには介護職でも貰えない人も居るということですね。
処遇改善手当の配分方法は基本的には上司や給与担当の職員に確認するしかないのですが、
お金に関することで上司には聞きづらいということがあるかもしれません。
そんなときは、まずは同じ職場の職員に聞いてみるといいでしょう。
他の職員も「貰ってない」「よくわからない」ということでしたら、一緒に上司に確認してみるのも手です。
大勢の職員がまとまって処遇改善手当についての説明を求めれば、応じてくれる可能性もあります。
事業所には説明する義務がありますので、きっと説明してもらえるでしょう。
もし、どうしても説明してもらえないなどの場合は、都道府県の労働局、または労働基準監督署に相談されることをお勧めします。
分配方法が変わることがあるのか?
下の質問者さんの職場では処遇改善手当の支給方法が、
一時金による支給から毎月の給与と合わせて支給へと変更されたようです。
処遇改善手当が今月支給されましたが去年は25万頂きましたが
今年は分割でする ということで毎月20000円ずつ給料日に加算されるということで
今月の給料に20000円が入っていました。
理由は手当をもらうと止める人がいるためだそうです。
なんかこれっていうのはその職場が決めるということですかね。 よくわからないので教えてください。 よろしくお願いいたします。
確かに25万円まとめて貰えていたのが毎月に分散されてしまうと、人によってはうれしさが半減しちゃうかもしれませんね。
こちらの場合でも、やはり支給方法については事業所の裁量が認められているので、
問題ないということになります。
もし、あなたの職場の処遇改善手当の分配方法が分からないときは、
- 上司や給与担当者に確認する
- 就業規則、給与規則を確認する
上記の方法で確認するといいでしょう。
「上司に聞くのが気が引ける」、「就業規則がどこにあるかわからない」場合は、
まずは先輩職員に聞いてみるのがいいかもしれません。
処遇改善手当の分配に関する計画書を見たことがない、説明されない
処遇改善手当について、事業所は全体でいくらの加算を貰って、それをどのように職員に分配するか、
計画書を作成して役所に提出することになっています。
以下の質問者さんの事業所ではその計画書についての説明がされないようです。
介護保険の処遇改善手当についての質問です。
私が働いている訪問介護では処遇改善3を取っているみたいなのですが、
先日処遇改善計画書に対しての周知のサインを求められました。
私はこの計画書を見たことも無く、またなんの説明もうけておらず何に対してサインしていいのか分かりません。
管理者に計画書は社長に自分から伝えて見せてもらってくださいと言われ他の職員は確認もせずサインしていました。
私は何か問題がある事だと怖いなと思い、サインは断ったのですがこれにより私だけ処遇改善手当分の支給が出ないなどということは有り得るのでしょうか?
また、サインをする、しないで何か大変な事態になるのでしょうか?
考えると不安なので是非とも教えて頂きたいです。
この質問に対する返答が以下のものでした。
処遇改善加算の申請には、
「処遇改善計画書を全従業に周知し、改善内容を示す必要がある」という要件があります。
質問者さんがサインをさせられようとしたのは、「周知を受けてきちんと内容を把握しましたよ」という意味合いのものだと思われます。
という訳で、計画書や改善内容も見せずにサインをさせるのは事業所側の加算要件違反ということです。
サイン自体には何の効果もないため、「サインをしないから処遇改善手当の対象から外す」ということ自体さらに悪質な違反です。
悪いのは事業所側であって質問者さんの意見が正しいのですが、残念ながら介護業界の運営はその辺りの認識が疎い所が多いのが現状です。
要件違反なので、保険者に通報すれば何かしら対処してくれるかも知れませんが、
それで解決するかと言われると微妙な所です。
他の従業員を含め「処遇改善の中身を知りたい」と声を上げることが一番なのですが…
事業所にはどのように処遇改善手当を分配するか説明する義務があります。
上の質問者さんがおっしゃる通りの対応だとしたら、かなり悪質な事業所だと思います。
とにかく、処遇改善手当について、どのような分配方法なのか疑問に感じているなら、
上司に確認することが大切です。
事業所が誠意ある対応をしてくれないときは、転職も考えよう
ネット上の処遇改善手当に関する質問を見ていると、「配分の方法についてちゃんと説明してくれない」等、
事業所の対応に対して不信感を抱いている人が多く居ました。
まずは他の職員も巻き込んで対応を改めるよう事業所に対して求めたり、
都道府県労働局や労働基準監督署に相談されるといいでしょう。
または、どうしても事業所の対応に納得できないときは職場を変えてしまうのも手です。
「転職をしたことがないから、いい職場をどのように探したらいいかわからない」、
そういうときは転職エージェントを利用されるといいでしょう。
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「上司や経営者が職員のことをしっかり考えてくれている」など、
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まとめ
処遇改善手当は、事業所が国の定める「キャリアパス要件」、「職場環境等要件」を満たしている場合に貰える手当のことです。
特定処遇改善手当は、処遇改善手当に上乗せされる形で支給される手当です。
処遇改善手当よりも厳しい要件が課せられており、その分給付額も大きいです。
ただし、処遇改善手当、特定処遇改善手当ともに、どのように職員に配分するかは事業所自由に決められます。
なので、「誰が貰えるのか」、「いくら貰えるのか」は事業所によって違います。
あなたが手当を貰えるのか、貰えるとしたらいくら貰えるのかは事業所に確認するしかありません。
いきなり上司に確認するのが難しいときは、周りの職員と協力して訴えかけるのも一つの手です。
どうしても「上司が説明してくれない」という場合は、
都道府県の労働局や労働基準監督署に相談されると良いでしょう。
この記事により処遇改善手当について、あなたの疑問が解決されれば幸いです。
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