電子式血圧計で血圧を測定するとき、何度測ってもエラーになってしまうことがあります。
そのようなとき、なんとか血圧を測ろうとして水銀式の血圧計を使用していませんか?
介護士は電子血圧計で血圧を測定することが許可されていますが、水銀式血圧計を使用することは、「医行為」に該当し、行うことができません。
しかし、血圧が測れないと利用者の健康状態の異常に気づきにくく、困ってしまいますよね。
この記事では、血圧測定の注意点やエラーになった時の対処方法などについてお伝えします。
電子血圧計で測定できない時の悩みもスッキリ解消されるでしょう。
介護士ができる血圧測定とは?
介護士は電子血圧計を使用して血圧を測定することは許可されています。
しかし、水銀式やアネロイド型の血圧計を使用して血圧を測定することは「医行為」に該当するため、介護士が行うことはできません。
参考資料:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の 解釈について(通知)
これらの血圧計は使用の際、カフに空気を入れすぎて腕を圧迫して、内出血を起こす危険性があるからです。
電子血圧計がエラーになってしまう原因
電子血圧計を使用しての血圧測定では、しばしば測定エラーになることがあります。
測定エラーとなってしまった場合は、カフの巻き方や振動を与えていないか見直し、5〜10分程度時間を置いてから再度測定するようにしてみましょう。
それでもエラーになってしまったら原因は、下記の3つが考えられます。
- 血圧の測定可能範囲を超えてしまっている
- 血圧計がうまく血管の振動を感知できていない
- 血圧計のトラブル
原因①:血圧の測定可能範囲を超えてしまっている
血圧計の測定範囲は、メーカーや機種によって異なりますが、平均的には下記のようになっています。
- 最高血圧:50〜260mmHg
- 最低血圧:40〜215mmHg
この範囲外の数値になると測定エラーとなってしまいます。
この事例は稀なため、ほとんどが次に挙げる原因の②や③に該当します。
また、実際に血圧が測定範囲外の場合もありますので、その際は顔色や頭痛・めまいなどの自覚症状の有無などを確認し、状況に応じて医療機関へつなげるようにしましょう。
原因②:血圧計がうまく血管の振動を感知できていない
電子血圧計は、血液が血管を流れる振動を感知して血圧を測定するしくみになっています。
厚手の服の上からカフを巻きつけたり、まくった服の袖で上腕を圧迫してしまい血流が悪くなると、血管の振動をセンサーがうまく感知できず、測定エラーとなってしまうことが良くあります。
また測定時に腕を動かし振動などが加わると、センサーがその振動を誤って感知してしまい正しく測定できないこともあるのです。
測定エラーとなる原因としては、適切に血管の振動を感知できずエラーになることの方が多いでしょう。
原因③:血圧計のトラブル
エアチューブの破損やエアチューブが血圧計の本体にしっかり差し込まれていないこと、または電池残量の不足などにより、
カフの加圧が途中で止まってしまい測定エラーになってしまうことがあります。
まずは、エアチューブに異常がないか確認し、改善されなければ、新しい電池に交換してみましょう。
それでも改善されない場合は、故障の可能性も高いので、販売元(メーカー)に問い合わせをしてください。
エラーにならないための血圧測定の注意点
電子式血圧計を用いて血圧を測定する際、エラーにならないための注意点をお伝えします。
注意点としては、下記の3つです。
- カフ(腕に巻きつける部分)を正しく巻く
- 厚手の服の上からカフを巻かない
- 測定中は、腕を動かしたり、振動を与えたりしない
注意点①:カフを正しく巻く
カフは、肘の関節から1〜2cm上に巻くようにします。
その際、カフと腕との隙間ができないように巻いてください。
血圧測定は、左右どちらで測定しなければいけないという決まりはありません。
しかし、麻痺がある場合は、血流が悪くなっていることがあるため麻痺がない方の腕で測定するようにしてください。
注意点②:正しい姿勢で測定する
背もたれのある椅子に座ってリラックスできる姿勢で測定します。
その際、テーブルに肘をつき、カフと心臓の位置が同じ高さになるようにしましょう。
カフの位置が心臓より高くなると、血液の流れが悪くなり血圧は高くなります。
逆に心臓より低い位置になると血液の流れが良くなり、血圧は低くなります。
場合により、エラーになってしまうこともあるので、カフの位置は心臓の高さに合わせるようにしましょう。
注意点③:測定中は、腕を動かしたり、振動を与えたりしない
測定中に腕を動かしたり、振動を与えたりすると血圧計が誤ってその振動を感知してしまい正しく測定できなかったり、測定エラーになってしまったりすることがあります。
測定時は、腕を動かさないように利用者にしっかり説明をしましょう。
認知症の利用者の場合は、説明しても腕を動かしてしまう場合もあるため、血圧測定中はそっと利用者の手を握ってあげると、安心感も感じることができ効果的です。
測定する側も振動を与えないように注意しましょう。
血圧測定時のその他の注意点
測定エラーになるまでは影響しませんが、正確な血圧を測定するために注意することとして、下記の3つのことがあります。
- 測定の前に息の上がるような運動や動作は避ける
- できるだけ同じ時間に測る
- 室温を一定にする
注意点①:測定の前に息の上がるような運動や動作は避ける
人は、運動をすると全身に血液を流そうとします。
そうすると血管に圧力がかかり、血圧が上昇してしまいます。
測定の約10分前には、運動などを控えるようにしてもらってください。
高齢者の場合、歩いたりするだけで息が上がり、血圧も上がってしまうこともあります。
そのようなときは、血圧を測定する前にお茶などを飲んでもらいゆっくりしてもらってから測定しましょう。
注意点②:できるだけ同じ時間に測る
血圧は、1日の中でも測定する時間帯によって変動します。
朝から日中にかけて活動性の向上に伴い血圧も上昇し、夕方から就寝にかけて活動性の低下に伴い、血圧は低下します。
血圧を測定する時間は、できるだけ同じ時間帯に行うようにしましょう。
それにより、普段の血圧との違いに気づくことができます。
注意点③:室温を一定にする
室温によっても血圧は変動します。
寒ければ、血管は収縮し血圧が高くなり、逆に暑ければ血管は拡張し血圧が低くなります。
血圧を測る際は、室温を20度前後にすると良いでしょう。
エラーで測れない時の対処法
何度測定しても、測定エラーになってしまうことが稀にあります。
そのような時は、電子血圧計を用いた触診法で血圧を測定しましょう。
この方法は、頭骨動脈(手首で脈が触れる部分)の脈拍により最高血圧のみを測定することができる方法です。
異変の早期発見という観点においては、最高血圧のみがわかるだけでも十分な情報なので、どうしても測れないときはこの方法を試してみてください。
触診法の測定方法
①カフを腕に巻いてから、測定する腕の頭骨動脈の脈拍が触れる部分に第一指と第二指を当てる。
頭骨動脈の脈が触れる部分は、中指の先(第3指)から真っ直ぐ下に下ろした手首のあたりにあります。
脈が触れる部分に優しく2本の指で添えるようにしましょう。
強く抑えてしまうと、高齢の方の場合、内出血(アザ)を起こしてしまう場合があるので注意して下さい。
②電子血圧計による測定を開始する。
電子血圧計の測定を開始し、腕が徐々に加圧されていきます。
ある程度加圧されていくと頭骨動脈の脈も触れなくなります。
それから減圧されるのを待ちましょう。
③減圧され、脈が触れたところの数値を確認する。
徐々に減圧されてくると頭骨動脈の脈が再度触れるようになります。
脈が触れはじめた時に電子血圧計の表示されている数値を確認しましょう。
それが最高血圧となります。
ここでの注意点として、この方法では最低血圧は測定できません。
触診法は、脈拍により血圧を測定する方法です。
聴診法は、減圧して血管の音が聞こえなくなった時が最低血圧として測定できますが、触診法では、減圧しても脈が触れなくなることはないため、測定できないのです。
介護現場でよくある血圧測定の悩み
実際の介護現場ではすんなり血圧測定できることばかりではありません。
認知症の利用者に「血圧測定を拒否」されたり、健康に不安を抱えた利用者も多いので「測定した血圧が異常値だった」など様々なことがあります。
そのような時でも慌てず対応できるように状況別に対応方法をお伝えしていきます。
認知症で血圧測定に拒否がある利用者の対応
認知症の利用者の血圧を測る際、拒否されることがあります。
拒否の原因は、「何をされるか分からず不安」という思いから起因することが多いです。
通常、「血圧測定」と聞くと「腕にカフを巻かれて、その部分が圧迫されて血圧が測定できる」ということを理解できますが、認知症の方は、その一連の流れが理解できないことがあります。
そのため、十分な説明がないと不安になり、拒否が見られます。
誰だって、急に分からないことをされたら不安になり、拒否しますよね。
普段から血圧測定時の声かけは必要ですが、認知症の利用者に対しては、普段以上に丁寧に一つ一つの動作に対して声かけをすることが望ましいです。
どうしても拒否が強い場合は、無理せず時間を置いて利用者の気持ちが落ち着いてから測定しましょう。
血圧が異常値だった時の対応
血圧の正常値と異常値は、下記の表の通りになります。
最高血圧(収縮期血圧) | 最低血圧(拡張期血圧) | |
正常値 | 130mmHg未満 | 85mmHg未満 |
高血圧 | 140mmHg以上 | 90mmHg以上 |
低血圧 | 100mmHg以下 | 60mmHg以下 |
血圧が基準値より高い場合
血管にかかる圧力が高い状態に なり、頭痛やめまいの自覚症状が見られる時があります。
血圧が高い状態が続くと脳梗塞や脳出血、 心筋梗塞などを発症するリスクが高まります。
血圧が基準値より低い場合
血液が体中に行き渡らない状態となり、臓器が正常に機能しなくなる恐れがあります。
自覚症状としてはめまいや立ちくらみなどがあります。
最高血圧と最低血圧の差が大きい場合
最高血圧と最低血圧の差(脈圧)が大きい場合、血管の弾力が失われ動脈硬化が進んでいる可能性があります。
動脈硬化が進むと血管の柔軟性を失い、血管に負担がかかる状態となり、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を発症する危険性も高まります。
血圧が異常値の時の対応
看護師のいる施設の場合は、すぐ看護師へ報告して指示を仰ぐことができますが、看護師のいない施設の場合は、下記の対応を参考にしてください。
まず、普段の血圧との違いや自覚症状の有無を確認してください。
普段の血圧より高かったり、低かったり、自覚症状があるなどの場合は、ベッドなどに横になって安静にします。
安静にして症状の改善や血圧の数値が正常値に戻った場合は、そのまま経過を見ても良いでしょう。
安静にしても 改善が見られない場合、また、自覚症状がなくても血圧の異常値が数日続く場合は、
脳梗塞や心筋梗塞などの大きな病気につながる危険性もあるため、早めに医療機関へ受診するように勧めましょう。
また降圧剤を服用している方で血圧が低い時は、薬を服用しないほうが良いのではないかと考えるかもしれませんが、服薬の判断を介護士が行うことは決して行わないで下さい。
どうしても心配な時は、主治医に確認するようにしましょう。
まとめ
介護士による測定エラーにならないためのポイントとその対処法をお伝えしてきました。
電子血圧計においてエラーになりにくくするための注意点としては、下記の3点です。
- カフを正しく巻く
- 正しい姿勢で測定する
- 測定中は腕を動かしたり、振動を与えたりしない
正しい測定方法を行って、何度測り直してもエラーになってしまう場合は、「触診法」による血圧測定を行なってみてください。
介護施設では、認知症の利用者や健康に不安を抱えている方も多くいらっしゃいます。
血圧測定を拒否されたり、測定した血圧が異常値だったりしても慌てず、状況に応じた対応を取りましょう。
介護士が電子血圧計以外で血圧測定をすることは、医療行為に該当してしまうため、今回お伝えしたきたことを参考に、安全に血圧測定の業務をこなせるようになりましょう。
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