腰痛を抱えたまま仕事していませんか?
日によって、痛みが違う、痛みがあっても3日くらい経てば痛みが薄れてくるので特に治療を受けてない人も多いのではないでしょうか。
腰痛を長引かせたり、病院にも行かず放置していると、その腰痛が「椎間板ヘルニア」だとしたら重篤な状態になるかもしれません。
そこで、この記事では腰痛と椎間板ヘルニアについて正しく理解して、腰痛が悪化しないための予防策を解説していきます。
腰痛の原因
まず、悩みの種である腰痛ですが、国民の80%は腰痛を経験しています。
その腰痛の原因は、非特異腰痛と言って85%が原因不明であると言われています。
しかし、15%はレントゲンやMRI画像などで原因部位を特定することができる特異的腰痛と言います。
その特異的腰痛の代表例
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
- 骨粗しょう症
- 脊椎分離症・脊椎すべり症
このように様々な種類がありますが、
今回はその中でも腰椎椎間板ヘルニアについて解説していきます。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは、腰椎の椎間板の一部である髄核が正常な位置から飛び出した状態のことを指します。
生卵の黄身が白身を突き破って出てきてしまったようなイメージです。
聞き慣れない言葉もあると思うので、以下に補足します。
腰椎とは
背骨の1個1個積み重なる骨を椎骨といいますが、背骨ね下部あたりの5つの椎骨のこと腰椎といいます。
椎間板とは
椎骨と椎骨の間にあるもので、水分をよく含んだクッションような役割を果たすものが椎間板です。
椎間板の中心には「髄核」と髄核を取り囲む「線維輪」で構成されています。
生卵で例えると、黄身が髄核で白身が繊維輪といったイメージです。
ヘルニアとは
体内にある臓器が、あるべき位置から出てきてしまった状態のことを言います。
よく聞く「脱腸」なども「鼠径ヘルニア」と言い、飛び出してしまった場所に対して「〇〇ヘルニア」という病名となるのです。
どんなことで椎間板ヘルニアになりやすいのか
では、椎間板ヘルニアはどんなことで起こりやすいのか見ていきましょう。
- 長時間座ったままの作業
- 中腰での作業
- 重い物を持つ作業
長時間の車の運転や中腰での作業、重い物を持つなど、腰に負担のかかりやすい作業に就いている人ほど発症しやすいと言えるでしょう。
長時間座ったままの姿勢
長時間座ったままだと腰に、上半身の体重が掛かっていきます。
このことで、腰の椎間板に圧が加わり続けると、押しつぶされた椎間板は隙間のある方へと移動しようとします。
その椎間板から飛び出した髄核が神経に触れることによってヘルニアの状態を引き起こすのです。
介護の場面だと、長い時間、椅子に座ったままというのは少ないと思います。
しかし、ケア記録を書いている間の僅かな時間や、研修や教育などの座っている時間などに気を付けてください。
対処法は座っている姿勢を変えてみたり、出来るなら、立ったり、歩いたりすることを心がけてください。
体圧が一定箇所に掛かり続けないようにしていきましょう。
中腰姿勢
中腰姿勢とは上半身を前に倒す動作となります。
介護の場面だと、排泄介助が代表的でしょう。
上半身のみを前に倒すという事は、身体全体を支えている腰に負荷が掛かり続けるという事になりますよね。
先程と同じで、椎間板に圧が掛かっている状態のため、突出した髄核が神経に触れるのです。
対処法は、膝を使って、しゃがむことです。
両膝が無理なら、片膝だけでもしっかりと膝を落とすことを意識していきましょう。
重い物を持つ姿勢
重い物を持つ際にも、同様に腰に負荷が掛かる事が原因です。
介護の場面で言うと、移乗介助が代表的でしょう。
これまでの2つと違う点は、腰へ掛かる負荷が一瞬で大きく加わるということです。
この僅かな時間で負荷を急激に上げないためには、日頃からの介助前の準備も大切になります。
その対処法は、背筋を伸ばしたまま持ち上げるように意識してみてください。
ポイントは頭や目線を下げずに、抱えているご利用者の肩越しから上を見るイメージです。
椎間板ヘルニアにならないために行う対策
椎間板ヘルニアにならないためには、普段からの予防が肝心となります。
ここからは、自分でできる腰痛対策を紹介します。
腸腰筋ストレッチ
腸腰筋をストレッチで柔らかくしていきましょう。
腸腰筋とは、足の付け根部分の奥にある筋肉です。
この腸腰筋が硬い状態であると、
- 姿勢が悪くなる
- 足が出にくく歩きづらくなる
- 腰やお尻、太ももなどに痛みが出やすく、動かしにくくなる
このように、腰痛の根本原因であることがわかります。
この腸腰筋のトレーニングをすることで腰痛の緩和に有効的であると言えるでしょう。
仰向けで行うストレッチ
- 床に仰向けになる
- 左足は伸ばしたまま右膝を曲げる
- 右膝を両手で抱えるようにして胸に向かって引き寄せる
- そのまま15~30秒キープする
- 元に戻り足を入れ替えて交互に5回行う
うつ伏せで行うストレッチ
- 床にうつ伏せになる
- 上半身を起こして両肘を床につけた状態にする
- そのまま30秒キープする
立ったまま行うストレッチ
- 椅子の後ろに立ち、両手を椅子に置く
- 左足を後ろに引いて膝をしっかり伸ばす
- そのまま10~15秒キープする
- 元に戻り右足も同じ様に行う
- 繰り返し6セット行う
座ったまま行うストレッチ
- 椅子に浅く座る
- おへそを少し前にして姿勢を正す
- 右足を天井に向かって持ち上げる
- 元に戻って左足を天井に向かって持ち上げる
- 交互に10回ずつ行う
しかし、痛みや痺れがある時は無理をせずに中止してください。
介助方法の見直し
日頃からご利用者の移乗や入浴介助などで、身体的に負担が掛かっている人が多く居ます。
力任せに行ってしまうと、ご利用者にも自身にも良い結果とはなりません。
- ボディメカニクスを意識した介助を行う
- ご利用者の残存機能を活かした介助を行う
- 腰痛ベルト利用して介助を行う
ボディメカニクスとは
- 介助する側の支持基底面を広く取る
- 重心を出来るだけ落としご利用者の身体を小さくまとめる
- 持ち上げずにスライドさせる
- 大きな筋肉を使う
- 肩と腰を平行に捻らない
このような介助方法を取り入れることで、ご利用者にも介助側にも負担の少ない方法となります。
こちらの記事でも詳しく紹介されています。
介護士の職業病とも言える腰痛!原因と対策のポイント!労災の適用も解説
ご利用者の残存機能を活かす
介助とは、ご利用者が一人でできないことをサポートすることです。
中には、日常生活全般を介助することが必要なご利用者も居られますが、基本的には出来ることはご自身でしていただくことです。
このことが残存機能を活かすことであり、介助側の腰痛軽減にも繋がります。
例えば、
- 入浴介助中、上半身~膝まではご自身で洗えるので足先のみを介助で洗う
- 排泄介助中、便座に座ればズボンの上げ下ろしができるので、ご自身でしていただく
このように、対応していくことで、腰に負荷の掛かる介助を軽減できることがあります。
腰痛ベルトの活用
腰痛ベルトの活用は腰痛の予防から腰痛の症状が出ている時まで多岐に渡って使用することができます。
腰椎の動きを制限したり、腰周りの筋肉のサポートをするための目的としてベルトを活用していきます。
腰痛ベルトには様々な種類があり、何を選べば良いのかわからない時はこちらの記事を参考にしてみてください。
介護士経験者が選ぶおすすめ腰痛ベルト5選!選ぶべきポイントとは?
福祉用具の活用
補足として、自分だけではなく介護施設側に協力を得ないと不可能な対策として、福祉用具の活用があります。
近年では、介助軽減の為の福祉用具がたくさん販売されています。
- 離床介助時のスライディングボードの活用
- 離床介助時のリフトの活用
- 床ずれ防止のために行う背抜き時の介助用グローブの活用
上記はいずれも介助者がご利用者を抱きかかえたり、ご利用者の身体を移動する際に行う介助であり、腰への負担が大きいものばかりです。
スライディングボードやグローブは比較的安価ですが、リフトとなると、かなり高額になってきます。
ご自身の働いている介護施設で導入されていない場合は、一度、上司に相談だけでも持ち掛けてみてはいかがですか。
もしも椎間板ヘルニアだと思ったら
椎間板ヘルニアの可能性がある初期症状
- 前に屈んだ時に出る腰の痛み
- 腰周辺から太ももに掛けての痺れ
- 下半身に力が入りにくい
このような症状は、神経を圧迫するため起こる「痛み」や「痺れ」といった特徴があります。
上記の症状があった場合は、直ぐに医療機関で診断を受けるようにしてください。
痛みや痺れを放置しないで受診する
しかし、知らない間に痛みが引いたことで、腰痛が治ったと勘違いする人も少なくないでしょう。
また、介護士に腰痛は付き物だと思い込んで多少の痛みなら我慢している人も居るのではないでしょうか。
痛みを放置していて、神経を圧迫したままだと痺れや麻痺が強くなり、次第に足腰に力が入りにくい状況になってきます。
特に椎間板ヘルニアは、髄核が突出したまま放置しておくことはとても危険です。
最悪の場合、排尿・排便障害などを引き起こし、手術をしないと日常生活でも支障を来たす程になることあります。
専門の医療機関を受診することで早期発見と早期治療を開始できることで回復が見込まれるのです。
もしも椎間板ヘルニアになったら
椎間板ヘルニアの治療法
医療機関でMRI画像診断やレントゲン診断の結果、椎間板ヘルニアであるならば、治療が必要になります。
- 保存療法
- 手術療法
このように椎間板ヘルニアの治療には大きく2種類に分かれています。
保存療法
保存療法とは手術を行わずに治療をしていく総称です。
その中に、薬物療法と理学療法、神経ブロックがあります。
薬物療法
薬物療法で主に使われる薬は、非ステロイド性消炎鎮痛薬やアセトアミノフェンなどです。
多くの椎間板ヘルニアは、これらを使って痛みを抑えている間に、痛みが自然に消えて良くなる傾向です。
理学療法
理学療法は痛みが落ちついたあとに体操や、専用の器具で身体を牽引など行います。
神経ブロック注射
神経ブロック注射は、痛みが強い場合は、神経を麻痺させることで特定の部位の痛みを取る効果が期待できるのです。
上記の様に、早期に発見できれば大事には至らずに治療できることが多いようです。
手術療法
痛みを放置したまま悪化してしまうと、保存療法では改善しない状態に陥ってしまいます。
この場合は、手術でしか改善が見込めなくなってくるのです。
手術は、背中を切開して直接、椎間板を摘出する場合や、
レーザーを用いて椎間板の圧力を低下させてヘルニアを引っ込ませるものなど様々です。
この手術となると、入院からリハビリまで、おおよそ1~3か月間を要します。
仕事を再開するまでに回復してくれれば良いですが、術後の経過次第では、介護職復帰は必ず出来るとも言えないでしょう。
なるべく、手術を避けられるように、早期受診を心掛けてください。
ヘルニアは労災になる?
また、椎間板ヘルニアになってしまい、痺れや麻痺といった症状が出ていると、仕事を休まなくてはなりませんよね。
その場合の補償として労災は適用されるのでしょうか。
厚生労働省の基準
厚生労働省が提起している労災基準から見ていくと、
椎間板ヘルニアなどの既往歴または基礎疾患があったり、仕事において再発したり悪化した場合、対象となることもあります。
出典:厚生労働省ホームページ
腰痛や椎間板ヘルニアは仕事中だけとは限らず、日常生活での積み重ねにより進行していくものでもあります。
ですので、仕事で発症したのか、そうでないのかの区別が付けづらいものです。
労災保険の基準
そこで労災保険では椎間板ヘルニアでの腰痛などに対して認定基準を設けています。
- 腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること
- 腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること
このような認定基準の基、介護業務中に発症したと言える突発的な腰痛は労災認定が降りる場合もあるでしょう。
ただし、慢性的な腰痛については、介護業務中に限定した症状とは言い切れない分、認定はされづらい傾向と言えます。
まとめ
椎間板ヘルニアのこと、少しでも理解が深まりましたか?
この記事では、少しの痛みや軽度の痺れだからと言って、病院を受診せずに椎間板ヘルニアを悪化させてしまう危険を伝えてきました。
椎間板ヘルニアについて、正しく理解した上で、発症防止や対策などを行っていきましょう。
まずはあなた自身が健康でなければ、安心・安全な介護サービスを提供できないのです。
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