介護士の仕事

認知症の対応に悩む新人介護士は必見!3つのコツとNGな対応を解説

「認知症の利用者の対応が難しいです。コツを教えてください。」

認知症の利用者って、正直どう接していいのか分からないですよね。

現在は65歳以上の5人に1人が認知症と言われています。

参照:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」

施設ではもっと多い印象で、介護をする上で認知症の利用者の対応は避けることができません。

そこで、今回は認知症の利用者が苦手なあなたへ、3つの対応のコツを紹介します。

これが分かれば、今感じているストレスがグッと減りますよ。

ぜひ最後まで読んでいってくださいね。

そもそも認知症とは?

認知症の対応を理解するためには、「そもそも認知症とは?」という所を知っておく必要があります。

まずはそこから確認していきましょう。

認知症の定義は以下です。

認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。

引用:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」

認知症は「病気」です。

冷静に対応できるように、この認識はしっかり持っておきましょう。

ちなみに、これとよく比較されるのが「加齢による物忘れ」です。

認知症と物忘れの違い

「認知症」と「加齢による物忘れ」の違いを簡単に整理しておきましょう。

介護士なら、利用者の家族に認知症の特徴や対応を指導する機会があるかもしれませんよ。

物忘れ 認知症
原因 老化 脳の神経細胞が壊れる
記憶 体験の一部を忘れる 体験自体を忘れる
進行 進行しない 進行する
理解力 低下しない 低下する
自覚 自覚がある 自覚なし
日常生活 支障なし 支障あり

参照:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」

上記は理解しておきましょう。

認知症は脳の障害によって、日常生活に支障をきたしている状態です。

発症は、「なんだか化粧の仕方がおかしい」「なんだかボーとしている」など、微細な変化から起こるといわれています。

認知症の4つの型

では、具体的な話に入っていきますね。

認知症は、原因となる病気によって4つの型に分類されています。

  1. アルツハイマー型認知症
  2. 脳血管性認知症
  3. レビー小体型認知症
  4. 前頭側頭型認知症

介護士として、この4つの名前は憶えておきましょう。

アルツハイマー型認知症

認知症の中でも、全体の半数を占めるのがアルツハイマー型認知症です。

記憶障害から始まり、症状が徐々に進行します。

一般的な認知症のイメージは、このアルツハイマー型認知症のイメージと一致します。

脳血管性認知症

脳梗塞や、脳出血などの脳血管障害によって起こる認知症です。

脳梗塞、脳出血が再発することで段階的に進行します。

脳血管障害による片麻痺などの後遺症と合わせて発症すると言われていますよ。

レビー小体型認知症

初期から実際には無いものが見える「幻視(げんし)」があるのが特徴です。

症状は、日中や夜間など時間帯によって増減しますよ。

前頭側頭型認知症

前頭葉と側頭葉が障害されて起こる認知症です。

自分の感情に対して、抑制が効かなくなり、感情の起伏が激しくなるという特徴があります。

欲求に従って、軽微な犯罪など、反社会的な行動をとると言われています。

認知症の症状の起こり方

具体的な症状についてですが、大きく分けて下記のふたつに分かれています。

  1. 中核症状
  2. 周辺症状

「中核症状」は、認知症なら必ず起こる症状です。

一方で、中核症状を元に、本人の性格や生活環境を関連して起こるのが「周辺症状」です。

詳しくみていきましょう。

認知症なら必ず起こる「中核症状」

脳の神経細胞が壊れることで起こるのが「中核症状」です。

  1. 記憶障害
  2. 見当識障害
  3. 実行機能障害
  4. 失行・失認

具体的には上記の障害が起こります。

代表的なのは記憶障害です。

記憶障害は、数年前など、昔のことは覚えているのですが

「朝食って食べた?」など、直近のことを忘れるという特徴があります。

他には、「時間・場所・人物」の見当がつかなくなる見当識障害

「服が着れない」「食事の食べ方が分からない」などの実行機能障害、失行、失認があります。

本人の性格や環境に関係する「周辺症状」

中核症状に、本人の性格や、周辺の環境に関連して起こるのが「周辺症状」です。

  1. 不安・焦燥感
  2. 弄便(ろうべん)
  3. 興奮
  4. 暴力行為

認知症になると、記憶障害や、見当識障害から周囲の状況が理解できず、慢性的な不安や、焦燥感を抱えることになります。

また、失禁した際にそれを触って隠したり、汚物自体を認識できずに触る行為を弄便(ろうべん)と言います。

前頭葉が障害を受けると抑制が効かなくなり、興奮や暴力行為を行うこともあります。

周辺症状は、「周囲の環境や状況」に関連して起こるため、環境を整えることで抑えることができます。

介護士がアプローチするのは、この「周囲の環境・状況」の部分になります。

具体的な対応は下記でみていきましょう。

認知症の対応のコツは3つ

ここからが本題ですね。

認知症の対応のコツは主に3つあります。

  1. 雰囲気は伝わる
  2. 感情は残る
  3. 相手の世界を理解する

基本になる部分なので、しっかりみていきましょう。

雰囲気は伝わる

認知症になり、コミュニケーションが取れなくなっても、「かもし出す雰囲気は伝わる」と言われています。

例えば「時間や余裕がなくてイライラしている」または「焦っている」

上記のような職員がいると利用者もそわそわして落ち着かなくなります。

まずは、「自分の雰囲気が伝わっている」ということを理解することが大事です。

具体的に注意することは下記です。

  1. 負の感情を表に出さない
  2. 穏やかな口調で話す
  3. 相手のペースに合わせる
  4. バタバタと大きな音を立てない
  5. できるだけ笑顔や、落ち着いた表情で声をかける

演技でもOKなので、どんな状況でも落ち着いて利用者と接することを意識しましょう。

感情は残る

記憶障害があるので、直近のできごとは忘れますが「楽しいことがあった」「嫌なことがあった」という「感情」は残ります。

例えば、夜間に隠れて職員に虐待されている利用者がいたとします。

記憶障害のため、虐待された事実は忘れます。

しかし「この職員とは何か嫌なことがあった」という感情が残るため、日中でもその職員のケアを拒否することになります。

自分でも、苦手な人に会うと、不思議と声が震えたり、緊張したりしますよね。

  1. 笑顔で接する
  2. 明るい雰囲気で接する
  3. 語尾はやわらかく話す

上記のように、いい感情が残るように対応することが大事ですよ。

相手の世界を理解する

相手のいる世界を理解することで、対応がみえてくることがあります。

下記は認知症の世界を描いたツイートです。

認知症になると、下記のような感覚があると言われています。

  1. 頭にモヤがかかったような感じがする
  2. ボーとして考えがまとまらない
  3. 理由のない不安が常にある

直近の記憶がない場合は、「なぜ自分がここにいるのかも分からない」ということもあります。

声かけの際は用件を伝えるだけではなく、「不安ですよね」と相手の気持ちに寄り添うようにしましょう。

介護士が直面しがちな「周辺症状」に合わせた具体的な対応

基本的なコツを見てきましたが、これでうまく対応できるようになれば苦労はしませんよね。

では、具体的な「周辺症状」に合わせて対応を考えていきたいと思います。

  1. 何度も「帰りたい」と繰り返して不穏になる利用者
  2. 暴力行為・セクハラをされる
  3. 何度も「財布がない」と探し回る

何度も「帰りたい」と繰り返して不穏になる利用者

こういった、状態でNGなのが「実際に自宅へ連れて帰ってみる」という行動です。

利用者が帰りたいのは「自分が輝いていた時代の家」かもしれません。

まずは、「なぜ家に帰りたいのか」を確認してみましょう。

ポイントは下記です。

  1. 相手の話を傾聴する
  2. 相手が帰りたい理由を確認する
  3. 気がまぎれるような散歩やレクリエーションを取り入れる

ゆっくり話を聞くことで、自分で今の状況を思い出して、「帰りたい」という気持ちがおさまることもあります。

シンプルに「今の家の様子が気になる」「取りに帰りたいものがある」というなら、実際に連れて帰るのもアリですよ。

暴力行為・セクハラをされる

この手の利用者に対して、NGなのが「相手の怒りや暴力に対して、感情的になる」ことです。

感情的に行動を制止しようとすると、相手の感情もさらに高まってしまいます。

介護士側も「恐怖」や「苛立ち」を感じるかもしれませんが、「病気」だということを認識して冷静に対応しましょう。

ポイントは下記です。

  1. 2人以上で対応する
  2. 別の職員が対応する
  3. 興奮している際はいったんその場を離れて様子をみる
  4. 精神薬を検討していもらう

ひとりで抱え込まず、無理だと思ったら他の職員へ対応を依頼しましょう。

また、介護士として、全てを「ケア」で解決したい所ですが、けがをするリスクもあります。

長期的な対応として、主治医へ相談し、精神薬を検討してもらうのもひとつの手ですよ。

何度も「財布がない」と探し回る

「財布がない」「家の鍵がない」というのも、ありがちな症状です。

NGなのが過度に「大変ですね!」「え、本当ですか?」とあおるような返答することです。

不安が高まり、「物取られ妄想」や「探し過ぎて不眠」ということになります。

落ち着いたトーンで「一緒に探すから大丈夫ですよ」と、安心できるような対応を意識してください。

ポイントは下記です。

  1. 落ち着いた雰囲気で対応する
  2. 入居時点で、貴重品は持ち込まない
  3. 財布、鍵などの貴重品は職員が預かっておく
  4. 本人が管理する際は、職員が時折、所在を確認しておく

自分で管理するのが難しい際は、職員が預かっておいて、探し始めたら「ここにありますよ」と一緒に確認しましょう。

そして、貴重品は預かっていることを説明して、金庫などの保管場所に本人が見ている前で片付けて「これなら大丈夫ですよ」と声をかけましょう。

とにかく、安心感を与えるように意識してみて下さい。

いい感情が残ると症状が改善されるきっかけになりますよ。

まとめ

今回は下記のことを解説しました。

  1. そもそも認知症とは
  2. 認知症の対応のコツ
  3. 症状ごとの対応

認知症の対応は、ある程度の経験が必要です。

難しさを感じているのはあなただけではないので安心してください。

これが克服できれば、ストレスは大幅に軽減できます。

ゆっくりでいいので学んでいきましょうね。

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