介護士の仕事

介護士の平均月収と給与を上げる3つの方法も紹介します

介護士は給与が低いイメージがあって不安に思いませんか?

実際に介護労働安定センターが実施した調査では、介護士の退職理由に「収入が少なかったため」という収入に関連した理由が上位に入っています。

前職(介護関係の仕事)をやめた理由

  • 職場の人間関係に問題があったため23.9%
  • 結婚、出産、育児のため19.9%
  • 収入が少なかったため15.6%

引用:「介護労働安定センター 労働者調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査」

今回は、30年間介護に関わってきた私が「これから介護の仕事を始める方」に向けて介護の給与事情についてお話します。

給与を上げるための重要な要素も解説しますので、これから職場を探す方はぜひ参考にしてくださいね。

介護士の平均月収

介護士の平均月収は常勤で約31万円。非常勤で約19万円です。

勤務形態 平均月収 平均基本給額
常勤 315,850円 170,460円
非常勤 196,630円 145,990円

参照:厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果

下記で詳しく見て行きましょう。

介護士の平均月収:男女別

性別や年齢によっても介護士の月収は変わります。それぞれ自分が当てはまるものを確認して見下さい。

【男性の平均額】

年齢 平均月収
平均  335,770円
29歳以下 295,580円
30~39歳 342,110円
40~49歳  357,260円
50~59歳  333,160円
60歳以上 289,800円

 

【女性の平均月収】

年齢 平均月収
平均  306,130円
29歳以下  287,430円
30~39歳 304,650円
40~49歳 315,000円
50~59歳  313,530円
60歳以上 286,080円

参照:厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果

上記は「夜勤手当」「資格手当」などの手当込みの額になります。

新人職員は「夜勤に入れない」「資格がない」などの条件から手当分は引かれます。

手取りで20万円を下回るということも十分考えられますよ。

地方ではもっと少ないケースもあり、実際に私の周囲でも「手取りで15万円だった」という話も。

多いか少ないかは個人の価値観によります。

しかし、多くの方が「少ない…」と思ったのではないでしょうか。

介護士の給与が低い2つの理由

介護士の給与が低いのには以下の理由が考えられます。

  1. 介護報酬は国で決めている
  2. 事業所の収入源に限界がある

詳しく見て行きましょう。

介護士が低収入の理由①:介護報酬は国が決めている

介護施設の収入は主に以下の2点でまかなわれています。

  • 利用者からの実費支払い
  • 国(市町村)からの収入(=介護報酬)

メインの収入は国からの収入です。これを介護報酬と言います。

介護報酬には様々な種類があり、事業所が条件を満たすことで、文字通り「報酬」として国から事業所に支払われます。

介護報酬の額は国によって決められており、事業所側が決めることができません。

事業所はある程度、国が決めた枠の中で経営していく必要があります。

介護士が低収入の理由②:利用者の枠に上限がある

事業所へ入所できる利用者の数は決められています。

利用人数が決められている=収入に上限があるということです。

一般企業のように「商品を作って売れた分だけ収益になる。売れ続ければ収益も青天井で増え続ける。」というわけにはいきません。

介護士の給与を上げる3つ方法

では介護士は低収入のまま働き続けるしかないのでしょうか?

安心してください。以下の方法で収入アップを狙うことができますよ。

  1. 管理職になる
  2. 資格を取得する
  3. 転職する

それぞれ詳しく見て行きましょう。

1.管理職になる

給与アップを狙うなら管理職を目指しましょう。厚生労働省のデータでは施設長などの管理職は一般職と、管理職では75,000円の差があるとしています。

役職の有無 平均給与額
管理職 354,420円
管理職でない 297,810円

参照:厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果

年収にすると90万円の差になります。この差は大きいです。

とはいえ「昇進」はこれから介護を始める方にはハードルが少し高いですよね。

そういった方は以下の方法を考えてみて下さい。

2.資格をとりキャリアアップする

資格を取りキャリアアップするというのもひとつの手です。取得する資格を選ぶポイントは「キャリアパス制度に準じているか?」です。

キャリアパスとは、国が推奨している、介護士のキャリアプランのことです。

「職員のモチベーションアップ」「事業所への人材の定着」「介護士の人材確保」を目的として始まったものです。

参考:厚生労働省HP

 

下記のように資格を取得することで段階的にキャリアアップできますよ。

※参考:厚生労働省「介護人材の機能とキャリアパスについて

多くの施設でこのキャリアパスが採用されており、対象の資格は手当の対象にもなっていますよ。

資格ごとの平均給与は下記を参考にしてください。

資格 平均月収
介護支援専門員  368,030円
介護福祉士 329,950円
実務者研修 303,230円
介護初任者研修 301,210円
無資格 275,920円

 

特に「介護職員初任者研修」「実務者研修」には受講資格がありません。

「資格を取りたいけど何から取って良いか分からない」という方にはおすすめですよ。

3.転職する

介護士の転職には2種類のパターンがあります。

  1. 職種を変える
  2. 職場(施設)を変える

①職種を変える

先ほどの「資格の話」とつながりますが、介護士の転職例として専門資格を取得して「職種を変える」というケースがあります。

私の場合は介護福祉士(現場職)→ケアマネジャー(相談職)という感じです。

職種 平均給与額 基本給与額 対象資格
介護職員 315,850円 182,260円 なし
看護職員 379,610円 235,460円 看護師
生活相談員 340,310円 213,000円 社会福祉主事
リハビリ職員 358,560円 228,040円 理学療法士/作業療法士
ケアマネジャー 357,850円 216,780円 介護福祉支援専門員

参照:厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果

中には専門学校へ通って勉強が必要なものもあります。

「介護士→看護師の資格を取り転職した」というのはわたしの周囲でもよくある話ですね。

②職場(施設)を変える

「これから職場を選ぶ」という方は、下記のように施設の種類によって平均給与が異なるということも知っておきましょう。

施設 平均給与額 平均基本給額
特別養護老人ホーム 350,430円 191,530円
介護老人保健施設 338,920円 177,670円
訪問介護事業所 306,760円 186,960円
通所リハビリテーション事業所 305,660円 175,810円
小規模多機能型居宅介護事業所 287,980円 173,080円
グループホーム 287,770円 170,460円
通所介護事業所 280,600円 180,540円

参照:厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果

平均給与は特別養護老人ホーム、介護老人保健施設がトップです。

通所介護事業所が下位になっていますね。これは夜勤の「手当額」が大きいと考えられます。

下記は「基本給」のみの比較です。

  • 通所介護事業所 180,540円
  • 特別養護老人ホーム 191,530円

差は1万円ほどですが、平均給与額(基本給+手当額)は

  • 通所介護事業所 280,600円
  • 特別養護老人ホーム350,430円

上記の通り、7万円の差が出ています。夜勤や資格手当などの手当額がどれだけ重要なのかが分かりますよね。

また通所系やグループホームなどは単独の小規模事業所なども含まれています。

小規模事業所は収入が小さく大型の施設に比べると、職員への還元が難しいということも考えられますね。

給与が良い職場を選ぶなら、夜勤ができる大規模な施設を選択しましょう。

介護士の月収に関連する5つの要素

これまで介護士の給与、給与アップの方法を紹介しました。

しかし、中には「管理職を目指すのはハードルが高い」「資格を取得する時間がない」という方も多いのではないでしょうか?

実際、私も介護福祉士や、ケアマネジャーを取得した際は苦労して勉強しました。

もしあなたが、まだ職場を決めていない段階でしたら、職場選びにはこだわってください。

というのも介護の仕事は昇給が少ないためです。

【平均給与額の推移】

年数 平均給与額
1年目 283,430円
5年目 296,630円
10年目 326,830円
15年目 348,530円
20年目 390,960円

参照:厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果

5年で1~2万円前後の昇給です。

それでも給与は上がっているように見えますが、管理職手当なども含まれているデータなので一般職の昇給はさらに少ないと考えられます。

20歳で「初任給は手取りで18万円だった。」という方が30代で「今月は19万円かぁ…。」というケースも考えられます。

伸びしろがない分、最初の職場選びでどれだけ給与が良い所を選ぶかは重要です。

「なんとなく理由はないけど…。」と言う安易な選択はしない方が良いです。

では、介護士の月収はどんなところを確認したら良いのでしょうか?

これから職場を選ぶ方は以下の5つはしっかり確認しておきましょう。

  • 基本給
  • 資格手当
  • 夜勤手当
  • 介護職員処遇改善金
  • 特定介護職員

1.基本給

まず重要なのが基本給です。

毎月の月収に差が出るほか、ボーナスについても「基本給×2」などで金額が決まります。例えば下記ですね。

  • 基本給18万円×3で年間54万円
  • 基本給15万円×3で年間45万円

基本給に3万の差があるだけで、3倍だとボーナスに10万円の差が出ます。この差は大きいですよね。

2.資格手当

先ほど資格の話はしましたよね。改めて資格手当は超重要です。

資格 (例)資格手当
介護職員初任者研修 3,000~5,000円
実務者研修 3,000~8,000円
介護福祉士 10,000~15,000円

介護福祉士になると資格手当で1万円という事業所も多いです。

記事の最後にもお話ししますが、こうした金額の積み重ねが大きな月収の差になりますよ。

3.夜勤手当

「介護士は夜勤で稼いでナンボ」とは私の友人の言葉です。

夜勤の手当てでも給与に大きな差が出ますよ。下記は2交代の場合の夜勤の平均手当額です。

  • 平均 6,632円
  • 最高 12,900円
  • 最低 3,500円

引用:「医療労働 2020年介護施設夜勤実態調査」より

 

例えば月6回夜勤に入ったとして最低額と最高額を比較すると、

  • 最高 12,900×6回=77,400円
  • 最低 3,500×6回=21,000円

差は56,400円に。年収に換算すると約67万円です。

この差は大きいですね。夜勤額はしっかり確認しておきましょう。

4.介護職員処遇改善加算

介護職員処遇改善金は「介護職員の離職防止」「介護人材の確保」のために作られた制度です。

事業所が「職場環境の改善の取り組みを行っている」「教育体制を整えている」など「一定の条件」をクリアすることで国から報酬が支払われます。

条件をどれだけ満たしているかで下記のように事業所に入ってくる金額に差が出ます。

  1. 37,000円
  2. 27,000円
  3. 15,000円
  4. 13,000円
  5. 12,000円

※職員ひとり当たりの金額

またどのように給与に反映されかは事業所に委ねれています。

加算金=その金額が給与になる」というわけではないので注意しましょう。

介護職員職処遇改善金がどれくらい職員に還元されているかはよく確認しておきましょう。

5.介護職員特定処遇改善加算

介護職員特定処遇改善加算は「勤続10年以上の介護福祉士に、月8万円もしくは440万円を超える金額を支給する」ということを掲げた制度です。

処遇改善金に上乗せする形で支給されますよ。

76%が2019年10月から算定するとしており、「経験・技能のある介護職員」に対する平均21,700円/月としています。

引用:独立行政法人福祉医療機構 2019 年度介護報酬改定₋介護職員等特定処遇改善加算アンケート結果

 

「月8万円の支給」とありますが実際には平均で21,700円となっています。

支給条件は

  • 勤続10年目~
  • 業界歴10年目~
  • 介護福祉士

など施設によって異なりますよ。

給与のシュミレーション。最高額と最低額の差は?

ではこれらの手取りや支給でどれくらい月収に差が出るのでしょうか?実際に給与シミュレーションしてみましょう。

まずは最低水準の月収を想定してみます。

  • 基本給17万円
  • 夜勤手当5,000円/1回×5回
  • 資格手当/介護福祉士 5,000円
  • 介護職員処遇改善金 10,000円
  • 介護職員特定職員処遇改善金 0円

合計210,000円

手取りで約15~17万円程度になります。

次に高水準の月収を想定してみましょう。

  • 基本給17万円
  • 夜勤手当12,000円/1回×5回
  • 資格手当/介護福祉士 15,000円
  • 介護職員処遇改善金 30,000円
  • 介護職員特定職員処遇改善金 20,000円

合計295,000円

手取りで25万円前後でしょうか。

最低水準と最高水準を比較すると85,000円の差がでます。

仮に最低水準→最高水準の職場に転職すると、家賃・光熱費の支払い、スマホ代の支払い、貯金ができるようなイメージですね。

年収で換算すると「約100万円」の差が出ます。年収ゾーンが変わってきますよ。

上記は極端な例ですが、十分にあり得る話です。

こうした要素の積み重ねで介護士の月収は大きく変化するということですね。

職場選びが不安なら転職エージェントを利用しよう

では、給与が良い職場はどうやって探せばいいのか?という話です。

求人情報では給与などが形成されていますが「前年度実績」という形で現在の給与と若干異なるものを掲載しているケースもあります。

実際の情報が欲しいなら

  1. 実際に事業所で働いている友人から情報を得る
  2. 転職エージェントから情報を得る

というものが考えられます。

「①」は当然、忖度なしで実際の情報が得られます。一番いいのがこれですね。

「②」の転職エージェントとは無料で「転職相談」「求人紹介」「転職サポート」などを受けられるサービスのことです。

転職エージェントは企業の内部情報も持っており、給与などに関してもニーズに合った求人を紹介してくれますよ。

「情報をくれるような友人・知人がいない」という方はぜひ利用を検討してみてください。

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転職エージェントでおすすめのが「かいご畑」です。

資格の重要性については記事内で触れましたよね。

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まずはしっかり職場を選んで働き始める→「いける」と思ったら資格も取ってみる。

上記の流れで月収アップを狙うのが良いでしょう。

登録~利用は全て無料なので気負わずに利用してOKですよ。

まとめ

この記事では以下のことを解説しました。

  1. 介護士の平均月収は25万円。手取りで20万円程度。
  2. 介護報酬は国で決めている
  3. 事業所の収入源に限界がある
  4. 給与を上げる方法は「管理職になる」「資格を取得する」「転職する」の3つ
  5. これから職場を選ぶ方は「基本給」「夜勤手当」「資格手当」「介護職員処遇改善金」「介護職員特定処遇改善金」はよく見ておこう
  6. 情報がなければ転職エージェントの利用もアリ

介護士は奉仕の心が大切ですが、それ以上に大切なのが仕事として給与を稼ぐことです。

条件の良い職場を見つけて、しっかりお給料をもらいましょう。

そして、その分しっかり利用者さんへ還元しましょうね。本日は以上です。

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