介護士になるには

介護士と看護師の違いは何か?それぞれの仕事が向いている人の特徴

「介護士と看護師で迷っています。このふたつは何が違うのでしょうか?」

「介護士と看護師ってどっちがおすすめですか?」

介護や看護業界に興味がある方で上記のように思っている方は多いのではないでしょうか?

どちらの職種も、病院や施設で利用者のオムツを変えて、食事のお世話をしています。

仕事内容が似ており未経験の方が混合して考えるのも無理はありません。

結論から言うと介護士と看護師はまったくの別物です。

この記事を書いている私は30年間介護に関わってきました。

様々な職場を経験して看護師とも一緒に仕事をしています。そのため看護師の働き方についても熟知していますよ。

この記事では、「介護士と看護師で迷っている方」へ向けて介護士と看護師の違いを分かりやすく解説しています。

違いを理解して自分に合っている職種を目指しましょう!

介護士と看護師の違い「医療職」or「福祉職」

定義上ふたつの仕事は「介護士=福祉職」「看護師=医療職」としての違いがあります。

具体的には

  1. 資格の違い
  2. 現場の役割(仕事内容)の違い
  3. 働ける場所の違い
  4. 給与の違い

上記が異なります。それぞれ詳しく見て行きましょう。

①現場での役割(視点)の違い

まずはふたつの職種に求められる役割(視点)の違いについて見て行きましょう。

仕事内容の違いといっても良いですね。

  • 介護士は「生活」の支援
  • 看護師は「医療」上の健康管理

介護士は利用者を「生活」という視点から支援を行います。

主な仕事内容は

  1. オムツ交換、入浴介助、食事介助、移動・移乗介助などの身体介護
  2. シーツ交換、環境整備、調理業務などの生活支援

のふたつになります。

身体介護を行うほか、利用者がより安楽に「生活」ができるように環境を整えるのが介護士の仕事になります。

利用者同士の人間関係の把握や、職員との関係性、本人の性格を加味して生活環境を整えていきます。

一方、看護師は利用者を「医療」という視点から支援を行います。主に利用者の健康管理が仕事です。

具体的には以下ですね。

  • バイタル測定、薬の管理
  • 医師による診療の補助
  • 点滴、採血の実施

時には介護士と同様にオムツ交換や食事介助などの生活の支援も行います。

ただ、看護師は利用者に起こることを「疾患」という視点から考えます。

血便が出ている」という一つの出来事に対して

  • 「癌、腸炎?何か既往歴はあるのか?」
  • 「出血で血圧は下がっていないか」
  • 「他に症状は無いか?」
  • 「先生に報告が必要か」
  • 「今はどのような薬を飲んでいるのか」

といった感じです。

身体の中で何が起こっているか」「疾病に関連してどのようなリスクがあるか」を考えて行動します。

同じ仕事をする場面でも、職種によって見ている視点は大きく異なりますよ。

②働ける場所の違い

ふたつの職種はメインで活躍している場所も異なりますよ。

看護師は主に病院で働いています。

看護師の就業場所

  • 病院70.9%
  • 診療所12.8%
  • 介護保険施設7.3%
  • 訪問看護ステーション4.3%
  • 社会福祉施設1.6%

引用:平成30年 衛生行政報告例

もちろん施設などの「福祉の現場」で働くことも可能ですが、少数になっていますね。

多くの看護師が「看護師は病院で働くもの」と考えて、実際に病院に勤めています。

一方で介護士の多くは施設で働いています。

介護福祉士の就業場所

  • 高齢者関係81.8%
  • 障害者関係9.4%
  • 医療関係6.1%
  • その他2.4%
  • 無回答0.3%

引用:【令和2年度】社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査(公財)社会福祉振興・試験センター

「高齢者関係」の多くが施設サービスになっています。

病院でも働く介護士はいますが、主に「在宅サービス」や「施設サービス」になってきますね。

病院は「治療の場」です。

「生活支援」の専門職である介護士が活躍するのは「生活の場」である「在宅」や「施設」になってきますよ。

「介護士」「看護師」どちらで働くか迷っているなら、自分がどういった場所で働きたいかという視点で考えてみるのもアリですね。

③資格の違い

「看護師」と「介護士」は資格という面でも異なります。

介護士の代表的な資格は「介護福祉士」です。

介護福祉士は介護・福祉分野の国家資格になります。下記の手段で取得することができますよ。

  • 介護職として現場で3年以上(実務日数540日以上)の実務を経験したうえで、実務者研修を修了して、国家試験に合格する
  • 2年制もしくは3年制の専門学校を卒業して国家試験に合格する

働きながら国家資格の介護福祉士を目指そう!資格の取り方を教えます

介護福祉士は「名称独占資格」になります。

名称独占資格とは

資格取得者以外の者にその資格の呼称の利用が日本の法令で禁止されている資格。

引用:Wikipediaより

呼称が禁止されているだけ、資格がなくても介護士の業務は行えるということです。

無資格でもすぐに働けるというのは大きなメリットですよね。

一方で看護師は医療分野の国家資格になります。

看護系の3年制専門学校、4年制大学を卒業して国家試験に合格することで取得できます。

看護師は「業務独占資格」になります。

業務独占資格とは

業務独占資格とは、国家資格の分類の一つ。その資格を有する者でなければ携わることを禁じられている業務を、独占的に行うことができる資格をいう。

引用:Wikipediaより

つまり看護師の仕事は「看護師資格」がなければできません。

仕事をするためには学校を卒業して資格を取得する必要があります。

自分の状況を加味して、専門学校に通う「コスト」や「時間」はあるかを考えて職種を選択してみましょう。

④給与の違い

働く上で給与が1番大切だと考える人は多いのではないでしょうか?

「介護士」と「看護師」で給与は大きく異なります。

職種 年収 月収
介護士 318万円 26万円
看護師 492万円 34万円

参照:令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果賃金構造基本統計調査

月収で8万円の差、年収で170万円の差が。給与は看護師が大きく介護士を上回っていますね。

現状、給与だけを考えると看護師として働く方がいいでしょう。

介護士と看護師の関係性は「対等」

ここまでふたつの職種は違いを解説してきました。

ではふたつの職種の比べた時にその関係性はどのようなモノなのでしょうか?

ふたつの職種は対等ですが、考え方の違いから対立することもあります。

特に看護師は介護士を「下」に見ることが多いように感じますね。

オムツ交換や、食事介助などの生活支援は介護士でなくても行えますし、点滴、採血などの看護業務は看護師しか行えません。

行える業務の幅広さから勘違いした看護師が介護士を見下すというケースもあります。

逆に「看護師だから」という理由で必要以上に看護師にかみつく介護士もいます。

「生活」を見る介護士と「医療」を見る看護師が対立するのも無理はありません。

肝心なのは「利用者にとって最適は何か?」という考え方です。利用者を中心に据えて物事を考えることで健全な関係が築くことができます。

これから働く方は「ふたつの職種は別物であり上下関係は無い」ということを覚えておきましょう。

看護師に向いている人:3つの特徴

ではここからは「介護士」と「看護師」を比較した時にそれぞれ「どのような人が向いているのか」を解説していきますね。

あくまでも向き不向きの話なので、「当てはまらないから介護士や看護師になれない」というわけではありませんよ。

まずは看護師に向いている人は以下です。

  1. 物事を理屈で考えたい
  2. 専門性を極めていきたい
  3. 高齢者・障害者以外とも関わりたい

詳しく見て行きましょう。

看護師に向いている人①物事を理屈で考えたい

「病気」「疾患」から物事を考えるのが看護師です。

各臓器の役割や障害された場合に起こる症状などを順序立てて考えていく必要があります。

医療現場では「なんとなくこっちかな」という判断では患者の命に関わりますよね。

介護士も高齢者に起こる疾患などを理解しておく必要がありますが、看護師の方がより理屈づいた思考を求められます。

看護師に向いている人②専門性を極めていきたい

介護士のキャリアが整理され始めたのはここ数年の話です。

2015年に「認定介護士」が資格化され「キャリアパス制度」に基づいて専門性が注目されるようになりました。

一方で看護師は歴史は古く、すでに「認定看護師」「専門看護師」などのキャリアも確立されています。

「小児看護」「救急看護」「がん看護」「老人看護」など領域も細分化されていますよ。

大学院への進学や、JICA(国際協力機構)を使って海外支援などを行うこともできます。

働きながら自分の専門を見極めて、スペシャリストとしてキャリアを積みやすいのは看護師だと言えますね。

看護師に向いている人③高齢者・障害者以外とも関わりたい

看護の対象は「疾病・障害」を持つ全年齢。一方で介護の対象は主に高齢者・障害者にです。

「高齢者や障害者は苦手」「認知症の方が苦手」という方は看護師として成人分野を目指すと良いですね。

介護士に向いている人:3つの特徴

では介護士に向いているのはどのような人なのでしょうか?

  1. 利用者との時間を大切にしたい
  2. 「命の重み」を感じたくない
  3. 無資格からすぐに働きたい

詳しく見て行きましょう。

介護士に向いている人①利用者との時間を大切にしたい

利用者との時間を大切にしたいなら介護士がオススメです。

「一緒にテレビを見る」「一緒に調理を行う」「話しながら洗濯物をたたむ」というのも介護士の仕事になりますよ。

例えば施設サービスのひとつであるグループホームは以下のように言われています。

グループホームとは

食事の支度や掃除、洗濯などの日常生活行為を利用者やスタッフが共同で行うことにより、 認知症状が穏やかになり安定した生活と本人の望む生活を実現することができます。

引用:公益財団法人 日本認知症グループホーム協会

利用者とスタッフが生活をともにするというのが介護士の仕事でありケアにつながります。

これは看護師には無い考え方です。

利用者との時間を大切にしたいという方は介護士を目指しましょう。

介護士に向いている人②「命のプレッシャー」を感じたくない

看護師、介護士どちらも利用者の命を預かる重要な仕事です。

しかし、より命を預かるというプレッシャーが多いのは看護師です。

  1. 「人の役に立つ仕事がしたい」と看護師の資格を取った。
  2. 経験を積むために入った病院でICUや救命救急に配属され命の重圧感に耐えられなくなった。

上記は看護現場でよくある話です。

介護現場でも状態の変化があった場合に看護師に判断を一任されているケースは多いです。

「利用者の状態がおかしい」→「看護師に相談しよう」

上記のように命に関わる場面は看護師に任せておけるという安心感もあります。

介護士も利用者の命を預かる重要な仕事です。

しかし、看護の現場に比べて介護現場は急変のリスクは少ないというのも特徴になりますよ。

プレッシャーに弱い方でも比較的に働きやすいですね。

介護士に向いている人③:無資格からすぐに働きたい

無資格から働けるというのも介護士の大きなメリットになります。

まず働いてみて方向性が違った場合に他の仕事を探すこともできますし、「良いな」と感じれば資格を取ってその道を極めても良いですよね。

時間・コストをかけて看護学校へ行って「自分に合ってなかった」となるのは大きなロスです。

実際に私は営業職から22歳の時に介護業界に飛び込みました。

今では多職種の経験も良かったと思えますが、若い時はそういったことにも気づけないもの。

「すぐに働き始めたい」という方は介護士を選択しましょう。

無資格でも介護士はできる!無資格で働くメリット・デメリットを紹介

迷っているならまずは介護士から始めてみる

まだ専門学校などにも通っていない状態で、もし「看護師」「介護士」で迷っているのならまずは介護士として働いてみるというのはどうでしょうか?

看護師になるには最低でも3年間、専門学校へ通う必要があります。

学費、時間の面を考慮するとリスクもありますし、受験時期が合わなければ行動を始めることもできません。

介護士の職場には看護師もいるので、看護師の働き方についても知ることができます。

とはいえ目標を決めずに介護士を始めても何も考えないまま時間が過ぎてしまいますよね。

看護学校へ行きたくなった時の費用を貯めながら、介護士として期間を決めて現場を経験してみる

石の上にも3年と言いますが、1年働けばだいたいのことは分かります。

自分の気持ちや状況を整理して、そのまま続けたければそれでよし、看護師を目指したければ看護学校へ行く手段を確認しましょう。

大変ですが自分の人生です。本気で行動しても損はしませんよ。

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まとめ

今回の記事では以下のことを解説しました。

  • 介護士と看護師は「仕事内容」「働ける場所」「資格」「給与」が異なる。
  • ふたつの職種に優劣は無い。
  • 看護師に向いている人は「物事を理屈で考えたい」「専門性を極めていきたい」「高齢者・障害者以外とも関わりたい」
  • 介護士に向いている人は「利用者との時間を大切にしたい」「命のプレッシャーを感じたくない」「無資格からすぐに働きたい」
  • 迷っているならまずは介護士として働くのがおすすめ
  • その際は転職エージェントを利用してみよう

「介護士」と「看護士」は全くの別物です。ふたつの職種の違いを理解して自分がなりたいと思う方を選択しましょう。

まずは行動することが大切です。

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