介護職をする上で1番ストレスになりやすいのは人間関係ですよね。
なかでも、看護師との関係に頭を悩ませていませんか?
看護師が汚い仕事は手伝ってくれなかったり、まるで、介護士が看護師の助手のように雑用を押し付けられたり、偉そうに指示をされることってありますよね。
私も、看護師が挨拶さえしてくれないから、こちらも看護師に挨拶をしないという時期がありました。
度々、勃発する介護士VS看護師バトルこれがなければこの職場働きやすいのにな~と思うことってありますよね。
介護士と看護師はなぜ、仲が悪いのでしょうか?
良い人間関係の維持で、働きやすい職場を作り、円滑な他職種連携を築くためにも原因から探っていきたいと思います。
介護士と看護師の違いをみていきましょう!
さらに、私が特別養護老人ホームでチームリーダーとして働いていた頃に実際に行ってみた解決策をご紹介します。
ぜひ、参考にしてみてください。
介護士と看護師の不満
介護士も看護師もそれぞれお互いに不満を抱えているから、対立し、仲が悪くなってしまうのではないでしょうか?
両者の言い分からみていきたいと思います。
介護士側の意見
- 看護師はオムツ交換や入浴介助などの体力仕事や汚い仕事を手伝ってくれない。
- ケア後の後片付けを手伝ってくれない。
- 介護士も忙しいのに、テープ切りやガーゼのセットや物品補充などの雑用を押し付けてくる。
- 看護師は、ナースコールが鳴ってもすぐに走らない。
- フロアでの業務が終わったら、すぐに詰所に入ってデスクワークをする。(自分たちは、フロアの見守りをしながら、ケース記録を記入しているのに…)
- 高圧的な態度で、見下している。
- 利用者の病気やできないことばかり焦点を当て、その人がやりたいと言ってることをやらせない。
看護師側の意見
- 介護士は指示内容や申し送り内容を理解せず、勝手なことをする。
- 技術の向上をしてほしいから指導しているのにわかってくれない。
- 介護士はミスが多い。
- 介護士は無資格でもできる仕事だからレベルが低い。
- オムツ交換・入浴介助、環境整備は看護師の仕事ではないのに手伝ってと言ってくる。
- 高齢者はみんな持病があるのに、病気のことを第一に考えていない。
- 介護士のお局様が偉そうにくってかかってくる。
- 介護士のケアは危なっかしい。
あくまでも私がチームリーダーをしていた頃に、なぜいがみ合うのか、両者の意見を聞いた結果です。
一例ではありますが、双方の職業倫理や業務内容を理解していないところからきているように感じます。
介護士と看護師の力関係
本当は同じフロアで働いていても仕事内容が違うので、対等なはずですが、どちらも対等と考えられていないようです。
施設の形態によっても介護士と看護師の力関係が変わってきているようですので、みていきたいと思います。
①病院(医療院、医療療養型病棟、地域包括ケア病棟、回復期病棟等)
圧倒的に看護師の方が力関係が上です。看護師の指示の元、介護士は業務をすることになります。
看護師と介護士の人員的な比率も看護師の方が多くなるので、もはや対立というより、上下関係に近いかもしれません。
もう仲が悪いをとおりこして、介護士はこき使われ、罵られることへのあきらめにも似た境地ではないですか?
医療の場なので、当然かもしれないですね。
リハビリ職とは介助方法で時々対立してしまいますけどね。
②老健(老人保健施設)
1番、介護士と看護師の対立が多い施設形態かもしれません。
老健の利用者は、在宅復帰に向け、リハビリ目的での入所だったり、特養の空き待ちだったりします。
病状的にも完全に安定しているわけではないので、介護士もある程度の医療知識は必要になります。
病状管理や在宅復帰に向けてのリハビリというところでは、看護師の指示、計画の元、介護士がケアを行うことになります。
ですが、介護士の職務としては、老健は在宅復帰に向けた生活の場でもあるので、病状管理ではなく、日常生活上の自立支援が専門になってきます。
看護師は介護士に指導しようとして、言い方やケアにおける価値観の違いで対立が勃発してしまうことが多くあります。
スタッフの人数も看護師より、介護士の方が多いので、実は、看護師も介護士との人間関係に悩んでる方が多いのではないでしょうか?
だからこそ、自分では気づいていないかもしれませんが、看護師は、介護士に高圧的な態度で指示をしてしまうのかもしれませんね。
③サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、在宅介護
日常生活の場となる在宅系サービスでは、ケアマネが立てるケアプランをもとに、どの職種がどの業務をするのか、担当が決められています。
そのため、ほとんど対立は起こらず、お互いの専門分野や職務内容を尊重し合い、対等な関係で連携が図れていることが多いです。
④特養(特別養護老人ホーム)
今回、テーマとしている特養、少し詳しく解説してみましょう。
終の住処である特養は、圧倒的にスタッフも業務もメインは介護士になります。
看護師は、病院での勤務をリタイアした人・楽に仕事がしたい・利用者とゆっくりかかわりたいという人が特養で働くことが多く、どちらかというと年配の方が多いですよね。
一言めには、「これは、看護師の仕事ではない」「私は看護師だから」と言う人もおられ、介護士がどんなに忙しくしていてもしっかり介護と看護の仕事を線引きされてる方もおられますよね。
特に、新人介護スタッフに対して、強い威圧感で事細かく注意をして、人格をも否定する言い方をする看護師もいませんか?
新人介護スタッフへの指導に使命感を感じているのでしょうか?
反対に、特養の看護師は人数が少ない分、ベテラン介護士やお局様には、多勢に無勢なのか、何も言えなかったりするんですよね。
看護師が新人スタッフに、「処置で汚れたから着替えさせといて~」など、介護士が忙しい時間にもかかわらず指示をされることもありますよね!
特に、バタバタしている食後の口腔ケア~排泄介助~臥床介助中やレクリエーションの誘導をしている時に指示を出されたりすると、ちょっとタイミングと言い方を考えてよ!と思いますよね。
レクリエーションの時にも、確かにあまり体調が良いご利用者様ではないけど、ご本人がまだ、喜んで参加されているのに、「この人、まだ起きてるの?こんなに起こしてたらしんどいよ」と決めつけられることもありました。
介護士からすると、ご本人が喜んでいるなら、参加させてあげたいし、笑顔をみたいですよね!
声を出して指示をするならまだ、ともかく、無言で圧をかけることもあるものだから、それを知った介護士のお局様や正義感溢れるベテラン組が新人をかばい、看護師に腹を立て、結果、雲行きがあやしく・・・なんていう事件が何回も勃発していました。
でも、最近では、「ケアナース」という看護師の雇用形態もでてきました。
看護業務が必要ではない時は、介護士と一緒にオムツ交換や入浴介助、環境整備も行うような働き方も出てきています。
そういったところでは、看護師と介護士とうまく協働できるようになってきているんじゃないでしょうか?
職業倫理と役割から見る違い
医療福祉の現場では、同じ建物の中で、様々な職種が協働して、チームケアを行います。
一見同じような職業ですが、それぞれ、異なった専門性があり、価値観も違うんですよね。
ここでは、仲が悪く対立してしまうことが多い、介護士と看護師の専門性を理解していきたいと思います。
介護士の職業倫理と仕事内容
高齢者や障がい者の自立と安心して老いることができるように生活を支えるのが介護士です。
介護福祉士の職業倫理を一部抜粋してみました。
(職業倫理 抜粋)
(利用者本位、自立支援)
介護福祉士は、利用者をいかなる理由においても差別せず、人としての尊厳を大切にし、利用者本位であることを意識しながら、心豊かな暮らしと老後が送れるよう介護福祉サービスを提供します。
介護福祉士は、利用者が自己決定できるように、利用者の状態に合わせた適切な方法で情報提供を行います。
介護福祉士は、自らの価値観に偏ることなく、利用者の自己決定を尊重します。
介護福祉士は、利用者の心身の状況を的確に把握し、根拠に基づいた介護福祉サービスを提供して、利用者の自立を支援します。
(利用者ニーズの代弁)
介護福祉士は、暮らしを支える視点から利用者の真のニーズを受けとめ、それを代弁していくことも重要な役割であると確認したうえで、考え、行動します。
(地域福祉の推進)
介護福祉士は、地域において生じる介護問題を解決していくために、専門職として常に積極的な態度で住民と接し、介護問題に対する深い理解が得られるよう努めるとともに、その介護力の強化に協力していきます。
ここでいう「自立」とは、生活や身体的な自立ではないんです。
保険・医療・福祉・地域の資源を利用して支えられながらも、ほんの少しでもできていることを見つけ、活かしながら、その人らしい生活をするということです。
言い換えれば、病気を抱えていても、寝たきりになったとしても、病気や障害と上手にお付き合いしながら、今までどおりの生活ができるようにお手伝いをするのが、介護士の役割です。
看護師の職業倫理・看護業務基準と仕事内容
医師の指示の元、専門的な視点で、病気や怪我の治療や療養上の生活を心身両面から支えることが看護師の役割です。
看護師の職業倫理と看護業務基準も一部抜粋してみました。
(倫理綱領 抜粋)
(前文)
看護は、あらゆる年代の個人、家族、集団、地域社会を対象としている。
さらに、健康の保持増進、疾病の予防、健康の回復、苦痛の緩和を行い、生涯を通して最期まで、その人らしく人生を全うできるようその人のもつ力に働きかけながら支援することを目的としている。
(16 看護職は、様々な災害支援の担い手と協働し、災害によって影響を受けたすべての人々の生命、健康、生活をまもることに最善を尽くす)
災害は、人々の生命、健康、生活の損失につながり、個人や地域社会、国、さらには地球環境に深刻な影響を及ぼす。
看護職は、人々の生命、健康、生活をまもる専門職として災害に対する意識を高め、専門的知識と技術に基づき保険・医療・福祉を提供する。(略)
看護業務基準(抜粋)
1―1―2 人の生命及び尊厳を尊重する立場に立って行動する。
看護職は、人の生命、人としての尊厳及び権利を守る専門職である。
いかなる理由があろうとも、自らの専門職に課せられたこの責務を全うしなければならない。
また、他者による人の生命及び尊厳を損なうような行為に気づいた場合も、看護職は疑義を申し立てる。
1―2―4 主治の医師の指示のもとに医療行為を行い、反応を観察し、適切に対応する。
看護職は、保健師助産師看護師法第37条が定めるところに基づき主治の医師の指示のもとに医療行為を行う。
人の生命、人としての尊厳及び権利に反する場合は、疑義を申し立てる。
看護職は、各自の免許に応じて以下の点についての判断を行う。1.医療行為の理論的根拠と倫理性
2.対象者にとっての適切な手順
3.医療行為に対する反応の観察と対応
看護師の守備範囲は非常に拡いことがわかりますね。
生命と生活を守るのは、地域に住む高齢者や障がい者だけではなく、災害時にも医療を提供する。
何度もでてくる「人の生命、人としての尊厳及び権利に反する場合は、疑義を申し立てる」この一文だけをみても、生命を守る使命を持ったプロですよね。
対立を解決する方法
現に、私が勤務していた特別養護老人ホームでは、対立がなくなり円滑な他職種連携が図れるようになりました。
対立がなくなったことで、どんどん人が辞めていくのに歯止めをかけることができました。
やっぱり何においても仕事を続けられるかどうかは人間関係ですよね。
実際にどうすればうまくいったか、その方法をご紹介したいと思います。
お互いを知る
介護士の仕事は、名称独占と言い、資格を持っていないとできない仕事ではありません。
でも、介護士は、今までその人が生きてきた過去の歴史や価値観を大切にし、社会から孤立をしないように、生活環境を整え、衣食住を支えることが職責であり、プロなんです。
介護士は、24時間ローテーションでご利用者様の傍にいるので、ご利用者様にとっては1番身近な存在ですよね。
看護師よりも、普段との違いを見つけるのは早いはずです。
些細なことでも、看護師に報告をし、コミュニケーションを図っていってみてはいかがでしょうか?
実際に処置はできなくても、ご利用者様が不安がる、点滴や摘便の処置を励ましながらフォローすれば、介護士も医療知識を吸収できるし、ご利用者様も安心されます。
反対に、看護師は業務独占と言い、資格を持った人しか行えない業務です。
だから、看護師は、オムツ交換や入浴介助を手伝えても、看護師の点滴や処置は介護士が手伝うことができません。
病院では、治療の判断は医師がしますが、特養では、看護師に委ねられることになりますよね。
看護師の人数も少ないので、看護師の責任や負担もおそらく大きいと思います。
ご利用者様とのコミュニケーションにおいても、介護士と看護師は、違う視点でみているはずです。
介護士が行うコミュニケーションは、豊かな老後を送れるように特にはスキンシップをし、楽しませ、活気と自立した生活を行えるようにすることを狙いとし、その中で心身状態の確認をしていますよね。
看護師は、食事摂取量や排泄量や呼吸状態など、心身状態の観察をしつつ、コミュニケーションを図り、健康状態の維持と悪化の早期発見、心身状態の向上を図ることを狙いとしているのではないでしょうか?
それだけ、役割りや職責が異なる専門職がお互いの仕事内容や価値観が違うままではすれ違いが起こっても当然かもしれないですよね?
だからこそ、お互いの職種の役割、使命、価値観を認め合い、同じ建物で、同じご利用者様をみていても、畑がまったく違うんだということを理解する必要があるんじゃないでしょうか?
事例検討ミーティングを開く
職場の雲行きが怪しくなってくる前に、どこかで、対立の火種がくすぶりはじめたら、まずは感情的にならずに話し合いが大切です。
これは、1グループ1職種ずつがはいった4人~6人位のグループワークが有効的でした。
目的は、問題になっている利用者様を取り上げての事例検討でもいいですし、他職種連携がテーマの研修でもいいと思います。
- ケアに対して、どう思っているのか?
- 業務に対して、何を重荷に感じているのか?
- ケアに対して、何が不安なのか?
- お互いがカバーできるところはどこなのか?
場合によっては、ケアマネジャーや相談員を巻き込んでいって良いと思います。
ケアマネジャーや相談員は、円滑な連携を図れるようにすることが仕事です。
役割りをしっかり決め、そのケアへの想いを語ってみてはいかがでしょうか?
この会議や研修をはじめる前に、リーダーやベテラン勢には協力していただきたいことがあります。
介護士に成りたての新人さんや発言が苦手な方は、バリバリの看護師を前にひるんでしまうかもしれません。
「介護士は、高齢者、障がい者の生活を守るプロです。あなたも専門職なんです!だから、ひるむ必要はありません」ということを、伝えてあげてください。
堂々と意見交換をできる環境を作ってあげると今後の他職種連携がきっとうまくいくはずです。
反対に看護師も介護士のお局様を前に臆してしまうかもしれないし、素人相手に何を言っても無駄と思うかもしれません。
でも、ケアや職場環境を良くしようと思っているのは、共通の目的です。
お局様の想いも受け取り、専門的見地から意見を共有するところからはじめていきたいですね。
医療と福祉。分野は似ているようで、異なっているけれども、お互いのケアへの想い、業務の負担をミーティングや研修で知ることにより、同じ、専門職だということが気付くことができるはずです。
自然と相手を尊重し、感謝の気持ちが湧いてくると思います。
お互いが知らなかったことを認め、双方が尊重し合い、感謝の気持ちを伝えることによって、指示の方法や受取り方も変わってくると思います。
まとめ
介護士と看護師は、福祉と医療。高齢者介護の現場では、きってもきれない関係です。
なぜ、対立し、仲が悪くなるのか原因と解決方法をまとめてみました。
原因としては
- 介護士にも看護師にもそれぞれ言い分があるが、お互いに職責や業務内容を理解していない。
- 介護士と看護師の力関係は職種が違うので本来は対等なはずだが、施設形態によって差がでている。
解決策としては
- 介護士は、高齢者や障がい者が病気や障がいを負っても、できるかぎり今までどおりの価値観で、生活が継続できるように自立を支援するプロということを理解する。
- 看護師は、医師の指示の元、専門的な視点で、あらゆる人の病気や怪我、妊産婦の治療や療養を行い、健康と生命を守るプロということを理解する。
- 職場の空気が穏やかではなくなる前に、お互いの役割や価値観を知り、お互いを認め合い、理解する。
- 対立が勃発しはじめたら、他職種連携を目的とした事例検討ミーティングや研修を開く。
医療・福祉で仕事をする人は、利用者様には優しいのに、職員同士には、気性が激しく、口も荒い人が多いですよね。
でも、本来は、みんな優しさの塊です。
そして、肉体的にも精神的にもハードな仕事ですよね。優しくなかったらこんな仕事やってられないですよね。
だから、ケアに対しての意見の違いや業務に対しての負担増で、対立が勃発してしまうのだと思います。
収拾がつかなくなり、離職者が出る前にケアマネや相談員を巻き込み、他職種連携を目的とした事例検討や研修を行ってみませんか?
よりよい職場環境を作り、ご利用者様の生活の質・健康状態の向上を図っていきましょう。
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